交通標語『狭い日本、そんなに急いで何処へ行く』が流行った時代

 私は現在76歳で、後期高齢者である。
 75歳以上の後期高齢者の運転者がスピード違反や信号無視等の一定の違反行為があった場合には、認知機能検査を受けなければならないことになっている。
 恥ずかしい話だが、38年間のサラリーマン時代に何度も更新したが運転免許証がゴールドになったことがない。
 私はせっかちな性格である。営業担当の任されていたころ、相手先の会議の時間が迫ってくると、どうしてもイライラして運転が荒っぽくなり、ついスピード違反をしたりしていた。
 高齢者となった今は、私はそうした違反をやらないように日ごろから、自分に言い聞かせている。

 先だっても、法定速度時速50Kmのところを、時速55Kmほどで走っていると、私の車の後ろに急激に迫ってくるワンボックスカーがルームミラーで確認できた。
 おそらく時速80Kmぐらいのスピードを出しているように思えた。追い越し禁止の道路だったので、何処か道幅の広い道路脇を見つけて車を停めると、ワンボックスカーは私の車を何の合図もなく、同じスピードで追い越して行った。
 運転者は気配からすると30代半ばの男性のようである。私はそんなに焦らなくてもいいのにと思いながら、またしばらく走っていると、今度はセダンが何の躊躇もなく、追い越し車線からはみ出して、私の車を追い越していく。運転者は助手席までスモークが貼ってあり、運転者が男性なのか女性なのかさえも分らない。
 私はふと50年以上も前に流行った交通標語『狭い日本、そんなに急いで何処へ行く』を思い出していた。
 この標語が話題になった頃、私はまだ学生だった。世の中が高度成長時代に突入した頃で、世の中全体がざわついていた時代でもあった。
 大学の英作文の授業で担当教授から、この標語の話題が取り上げられ、『狭い日本、そんなに急いで何処へ行く』をテーマに英単語1,000字以内で、英作文を作ってくるように宿題が出された。タイプライターはあったが、パソコンも自動翻訳機のない時代だったので、この程度の英作文でも時間を費やさなければならなかった。
 私はまず、『狭い日本、そんなに急いで何処へ行く』を英語でどう訳そうかと必死で考えた。この英訳にインパクトがないと、あとの内容もさして評価されないのではないかと思い、必死になったのである。
 考えた挙句に思いついた英訳は、『Japan is a small country, please tell me the reason why you are going.』であった。
 我ながらいい訳だと思っていた。だが、そのあとの英文を思い出そうと頑張ってみても、よく覚えていない。
 ただ、遠い記憶を辿っていくと、概ね次のような内容だったかと思える。
 <車の増加に道路の整備が追い付いていないので、車社会は今混乱の時期に差し掛かっており、名古屋地方には名神、東名の二つの高速道路しかなく、幹線道路も上手く繋がっていない現状だが、将来、高速道路や幹線道路が整備されれば、イライラ運転も解消され、このような標語は死語になるであろう。>
 私のこの英作文の担当教授の評価は+Aであった。私の通っていた大学の評価は+A、A、B、C、Fの5段階評価になっていた。FはFailureのFのことで、不合格の意味である。つまり私の英作文の+Aは90点以上の評価を受けたことになる。
 今日、私を追い抜いていった2台の車を見ても、道路整備の問題だけでは、急ぐ余りに無理な追い越しを掛ける車を減らすことができない。
 スピード感覚のなさやそれに酔いしれる性格を直そうとしない限り、狭い日本の道路を如何に整備しようと、スピード違反はならないようである。

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