私の書く文章は映像を呼び起こし、読み手の連想を誘うような描写力が備わっていない

 昨日の毎日新聞の電子版に【伊集院静さん、くも膜下出血で倒れる 妻の篠ひろ子さん「予断許さぬ状況」】という見出しの記事が次のように載っていた。
 <作家の伊集院静さん(69)の個人事務所は23日、伊集院さんが21日にくも膜下出血で倒れ、緊急搬送されたと発表した。>
 私が伊集院静氏の著作を読むようになったのは、会社をRetireしてからであった。
 私はそれまで、伊集院氏が夏目雅子さんと妻子がいた頃からの長い不倫関係にあり、結婚前、夏目さんが伊集院氏との子を複数回堕胎しているということから、いい印象を持っていなかった。
 さらに私にとってショックだったのは、1984年に夏目雅子さんと結婚したが、その夏目さんは1985年2月に急性骨髄性白血病と診断され、そのまま9月に亡くなってしまった。
 ファンだった私は、伊集院氏との長い間の不倫状態が夏目さんの死を早めたのではないか、そんな根拠のない妄想に憑りつかれていた。
 そして1992年8月に今度はまた女優の篠ひろ子さんと再々婚したことで、持てない男のひがみであろうか、私はさらに伊集院氏に偏見を持つようになった。
 しばらくしてから、私は瀬戸内の小さな島に赴任してきた口のきけない臨時教師と生徒たちの交流を描いた映画『機関車先生』を観て感動したが、その原作者が伊集院氏だと分かり、古本屋で文庫本の『機関車先生』を買い、即刻、読み終えた。
 その後、『乳房』、直木賞を受賞した『受け月』『グラスの底に』『なぎさホテル』『いねむり先生』などを片っ端から読み続けた。
 このブログにもいくつか読後感を書き込んでいる。
 今日、改めて本棚を見ると文庫本が19冊、新書版の私の流儀シリーズが2冊、そして単行本が10冊も並んでいた。また別のところの棚には単行本の『あづま橋』『少年譜』『お父やんとオジさん』『羊の目』が置いてある。『お父やんとオジさん』以外はすべて短編集である。
 私の小説観は伊集院氏の小説を何冊も読むことで、私の小説観は、少しずつリアル重視へと傾いていった。
 今はただ伊集院氏の復活を願うのみである。

DSCN3802 (2).JPG 今日、河村雅隆氏の小説『その年の冬』を読み終えた。
 先だって、この単行本は地元のブックオフで見つけたものである。
 本裏表紙には191円というシールが貼ってあった。つまり191円とはいかにも中途半端な金額だが、消費税の10%を上乗せすると210円という切りのいい数字になる。
 最近のブックオフにはこの191円のシールが貼ってある本が多く置かれている。
 私は河村雅隆氏の小説『その年の冬』を買う気になったのは、裏の帯に書かれた次のような惹句を読んだからである。
 <昭和43年から44年にかけての冬。大学紛争の嵐は受験を控えた高校生たちに大きな影を落としていた。そんな中、「生への稀薄な意思」に悩みながらも人生の意義を模索し、未知の社会に踏み出していこうとする若者の姿を描いた中編。これまで日本文学において描かれることが稀だった、知的なエリート青年たちの姿を描く。>
 河村雅隆氏は1951年生まれで、東京大学経済学部を卒業している。私よりも7歳年下ということになる。
 つまり、【昭和43年から44年にかけての冬。大学紛争の嵐は受験を控えた高校生たちに大きな影を落としていた】の中の大学紛争とは70年安保のことを指しているものと思われる。
 私の学生時代は60年安保と70年安保との狭間である。名古屋近郊に住んでいた私は、60年安保のときも70年安保のときもテレビの映像で見ただけであった。
 その当時、高校生だった河村雅隆氏が70年安保をどのように受け止めたかを知りたいと思い、思わず衝動買いをしてしまった。
 だが、観念的なエリート高校生の会話が主体の小説で、肝心な同時代の生々しさが伝わってこない。どうも河村雅隆氏は小説を書くのが苦手のようである。
 河村雅隆氏は「あとがき」の中で次のように語っている。
 「小説というジャンルにおいては、登場人物が何を考えたかということと同じように、彼等が具体的にどのように行動したかとか、何を食べどんなものを着、どんな暮らしをしていたかということを描き込んでいくことはきわめて大事な要素だろう。思考(=肉体)という両方のファクターが相俟って、初めて小説というスタイルは成り立つものだろう。少なくても古典的な小説とはそのようなものだろう。しかし、小説に欠かせない描写というものが私は得手ではなかった。>
 自分の小説の的を射た分析ということができる。
 私の書き込む世界も語彙不足のためか、映像を呼び起こし、読み手の連想を誘うような描写力が備わっていない。能力不足と言っていい。
 そんなことを考えていたら、また伊集院静氏の小説を読んでみたくなっていた。

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