1年後輩の除草班の男性には聞かせたくない話である

 私は隣の市にある公立の刈谷高校出身だが、私がアルバイトをしている公園の除草班にはその刈谷高校の2年後輩の女性がいる。
 2年後輩ということは、私の初恋の人T.T.と同級生である。T.T.は名鉄三河線で碧南市から通学していたが、除草班の女性も同じ三河線の高浜港から通学していた。T.T.とは一緒のクラスにはなったことはないが、同じ三河線で通っていたので、顔はよく知っている。だが、話はしたことはないとのことである。
 ただ、そのことだけでも即刻、親近感がわいてきて、その女性は私のことを「先輩」とか、三河弁丸出しで「兄さま」と言ったりする。
 その女性の娘2人も刈谷高校を出ているとのことである。ときには母校の話で盛り上がることがあるのであろうか。理由は定かではないが、羨ましい気持でいっぱいになる。

 そして、同じ除草班に刈谷高校の1年後輩の男性が働いている。しかも私と同じ大府市出身である。
 当時、私たち2人はJR東海道線で通学していたが、私の同級生で、同じJR東海道線沿線の大高駅から通っていた女子高校生のことが話題に上ったことがある。1年後輩の男性は、その女子高校生の名前を頻りに訊いてくる。
 私が名前を告げると「自分はその人に憧れていた」と唐突に告白してくる。私はその女子高校生とは2年と3年に同じクラスであった。
 高校2年のときの修学旅行では、彼女の写真を数枚撮った中で、いちばん彼女らしい表情の写真を拡大し、私は自信満々で修学旅行の写真展に応募した。さすがに、その写真は最優秀賞には選ばなれなかったが、優良賞を獲得することができた。
 確か、そんなに話をしたことがない彼女が写真展を見て、珍しく私のところにやって来て、その写真がほしいと言ってきた。記憶によれば、喜んでプレゼントしたはずである。

 除草班の男性は1年後輩ということなので、毎朝、通学電車で彼女を2年間、見続けたことになるが、どうも未だにその時代のことが記憶から消え去らないようである。
 そう言えば、12年前に私は彼女のことを、次のようにこのブログに書き込んだことがある。
 <高校時代、その女子高生は一つ手前の大高駅から乗ってきます。
 私はプラットホームに佇み、彼女が同じ車両に乗っているか、いつも気にかけていました。
 高校は刈谷市にありましたが、大高駅から通う同級生はその女子高生しかなく、優しい目をした物静かな女の子で、朝の挨拶は互いに目と目を合わす程度で口を利いたことはありませんでした。
 高校2年生になり、彼女と同じクラスとなりました。
 ただ、私は生徒会の手伝いをしたり、文芸部の部長をやったりして学校中を駈けずり回っており、せっかく2年生は同じクラスになっても口を利いたことがありませんでした。
 偶然にも3年生も同じクラスになりましたが、その頃、私は初恋の人T.M.に夢中になってしまい、彼女の存在を気にしなくなっていました。
 明日、卒業式を迎えるという日、例によって文芸部の機関紙の校正をやっとの思いで終え、午後七時頃、JR刈谷駅の待合室に着いたとき、何処からともなく彼女が現れ、私の行く手を遮りました。
 「ずっと、Issaくんを待ってたの!」
 今まで遠くからしか見たことがなかった彼女の瞳が潤んでいるように思え、動揺する気持を抑えて、彼女の次の言葉を待ちました。
 「卒業する前にこれだけは言っておきたかったの。高校の三年間、同じ中学から通う人は誰もいなかったし、今の高校で友だちを作ろうと努力したけど本当の意味の友だちは出来なかった。いつも朝、Issa君がいたから3年間この学校へ通えたような気がするの。いつでもどんな時でもIssa君は元気だったから、沈みがちな私はいつも救われてきた。卒業して会えなくなる前に、どうしてもこの自分の気持だけは言っておきたかったの」
 私はその時始めて気がつきました。
 靴箱の運動靴が体育の時間が終わった翌日には、必ずきれいになっていたこと、ロッカーの埃まみれのトレパンが知らぬ間にきれいになっていたこと、散らかしたままの自分の机が不思議にいつもきれいだったこと。みんな、彼女がしてくれていたのです。
 「わたし、高校卒業したら就職するの。Issaくんは大学へ行くんでしょ、Issa君のこと、いつまでも忘れないからね」
 2人は沈みかけた夕日の中を定刻通りやってきた列車に乗り、再び口を開こうとはしませんでした。
 私は心の中で叫んでいました。
 「ケイコちゃん、本当にごめん、あなたの気持に気付かなくて」>

 1年後輩の除草班の男性には聞かせたくない話である。

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