給食室で最初に食べたちらし寿しの味が蘇ってきた

 私は現在、市の公園のバーベキュー場でアルバイトをしている。
 電話の予約受付と当日のバーベキュー場の受付業務は、主に4人の女性メンバーが行っている。
 その4人の女性メンバーの中には、若い頃、小学校の教員をしていた人がいる。
 先週のウィークデイ勤務のとき、その女性と同じ勤務シフトになった。土日の忙しいときには一緒の勤務になることはあったが、ウィークデイははじめてと言ってよかった。
 ウィークデイで予約客もなかったので、じっくり、プライベートの話をすることができた。
 その人のダンナは心臓病が悪化して、9月下旬に隣の市の総合病院に入院して、内視鏡手術をしたが、今は退院して自宅療養している。だが、体調は以前のように回復しておらず、自分が家にいるときは付っきりで面倒をみているとのことである。その女性は私よりも5歳年下である。
 そんな彼女はダンナに対して、今でも少し負い目があるとのことだ。
 自分は一人っ子だったので、若い頃から、もし恋人を作るならば、婿養子が可能な人と思っていた。つまり、中学生の頃から、家の存続・維持のために、婿養子を迎えることを自分に課していたと言うのである。
 はじめて勤務することになった小学校で、とうとう御眼鏡に適う人を見つけた。
 その人もまた小学校の教師をしていたが、知り合って間もなく、23歳で結婚したのが、今のダンナであり、婿養子が可能な4人兄弟の4男だということであった。
 その話の延長で、私も養子で一人っ子であり、大学生の頃に1年間ほど付き合っていた女性もまた養子で一人っ子だったために、結局、そのことが理由で別れることになった経緯を告白した。
 その理由とは、婿養子として家に入ってくれる人としか、付き合えないということであった。
 その条件には適合しない私は、いきなりハトが豆鉄砲を食らったように一方的に宣言されてしまった。私が21歳で、彼女が20歳のときだった。
 私の告白を聞いていた女性メンバーは、最初のうちは2人が本当に好き同士で、2人で必死で協力し合えば、一緒になっても何とかなったんじゃないのと言ってくれていた。
 だが、最終的には自分も女であり、しかも一人っ子で、婿養子に来てもらえる人に限定して付き合ってきたから、その人の気持もよく分かると同情し出した。そのうち、自分とは違い、その女性は養子ということなので、やはり別れた方がよかったとまで言い出した。
 確かに2人が無理に結婚しても、血の繋がらない両親を抱えて暮らすことは、幾つも超えなければならない苦労や困難が必ず待ち受けていると言っていい。
 今から思えば、彼女の選択は賢明だったと納得できる。
 初恋の人に別れを告げて、やっと相性のいい女性と付き合えるようになったと、有頂天になっていた私には、なかなか受け入れられない言葉であった。
 この女性のことについては、2010年のこのブログにUPしている。そのときの文章を少し改稿して、昨日のブログに書き込んだ。
 80%は事実だが、書き込みながら、思い出したことがある。
画像 私たちは最初、教育実習の中学校で知り合った。一日のうち何時間も一緒にいる訳だから、徐々に相手の気性も分かってきて、自然と親しくなる。
 昭和40年当時の中学校では、土曜日の午前中も授業があった。
 その土曜日の給食後、生徒たちが帰ったあと、私たちは後片付けの終わった給食室で3度ほど、一緒にご飯を食べた記憶がある。そのことを思い出したのだ。
 私たちは、土曜日の午後からも校長室に設けられた一室で、互いの教科は違っていたが、指導教案を作り、授業のタイムスケジュールを考え、板書の文章の位置や順序を考え、話し合っていた。
 そんな事情を知った給食室の賄い婦の人が、お腹がすくだろうからと食事を用意してくれ、午後2時ごろに校長室まで呼びに来てくれたのである。確か、その賄い婦の人は40代であった。
 後片付けに余念のない賄い婦の女性に食器を渡しながら、お礼を言うと、「2人のこと、応援しているからね」と微笑みかけてくれる。真赤になった2人に追い打ちをかけるように「いい思い出にしてよね!」と告げられる。私は天にも昇る心地になっていた。
 今なら、恋は2人だけで作り上げるものではないことがよく分かっている。
 こうした人たちとの一つひとつの繋がりがあるからこそ、自分たちの恋はより深く形成されていくのだ。そして、50年経った今でも、その場面が頭の中にくっきりと浮かび上がってくる。
 予告もなく、給食室で最初に食べたちらし寿しの味が蘇ってくる。

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