思い出の場所は変らず<It's as good as it used to be.>であってほしい

 昨日の英会話のテーマは形容詞の原級、比較級、最上級についての授業だったが、英会話講師のRaymondが突然、テキストの中のひとつの文を取り上げて、私に向かって、「ISSA、この文がどういう意味か、分るか?」と聞いてきた。Raymondは、私がボケッとした顔でいたので気合を入れるつもりで、不意に質問してきたのかも知れない。その文とは次のような文である。
 <It's not as good as it used to be. I think it's changed hands and it's gone downhill a bit.>
 いつまで経っても英語に関して未熟な私でも、最初の文の意味は理解できたが、二つ目の文の意味は、悲しいかな、まったく分らない。
 正直に分らないと答えると、Raymondは、レストランやカフェ、その他の店でもオーナーやマネージャーが代わる(change hands)と、店の雰囲気や味、そしてメニューの質や量、店員のサーヴィスなどが従来と異なってきて、少しずつ坂道を転げ落ちるように客足が減っていく、カナダでもよくあることだが、そんな状態を表現するのに<It's changed hands and it's gone downhill.>という言い方をすると教えてくれた。
 この言い回しは日本人の感覚にも充分マッチした面白い表現だと感心したが、ふと、ある店のことが頭を横切っていった。
 私は12年以上付き合っている女友だちF.H.とよく食事をしに行くが、10年ほど前、急にF.H.から、知多半島道路の大府インターの近くに新しくイタリア料理の店ができたから、一緒にランチを食べに行かないかと電話が入った。
 恥ずかしい話なのだが、私はそれまで家でミート・スパゲッティを食べるぐらいで、本格的イタリア料理の店に行ったことがなかった。それと同時に、私はチーズの入った料理が大の苦手で、隠し味でほんの少しでもチーズが入っていたりすると最後までおいしく食べれなかった。
 ただ、惚れた弱み、F.H.から誘われば付き合わざるを得ない。そして、あまりにチーズの味が邪魔になったら、タバスコやチリソースで味を分散させて、清水の舞台から飛び降りたつもりで食べればいいと覚悟を決めて出掛けていった。
 二人でその店に最初に行ったとき、ランチタイムの時間としては少し早めに出掛けたのであるが、店の入り口のウェーティング・チェアーには、もう大勢の人でいっぱいであった。私の住んでる大府市近郊にはイタリア料理の店がなかったこともあるが、その異常な人気ぶりに私は舌を巻いた。
 ただ、名古屋近郊の人たちは物珍しがり屋ですぐに飛びつくが、一旦味が自分に合わないと思ったら、あとは見向きもしなくなる性向を孕んでいる。ところが、この店は、この地方のテレビ局が取り上げたこともあり、その後も廃れることなく常に好評だった。私たちもまた、食事の行き先でどこに行こうか悩むと、昼夜を問わずに、この店を利用したものである。
 しばらくして、岐阜県土岐市にアウトレットができて、その近くにあったフランス料理店に行き出してからの数年間は、件のイタリア料理の店にはご無沙汰することとなってしまった。
 そして、最近になって、夕食を食べに久し振りに行ってみると、夕方6時なのに駐車場に停まっている車はほんの2、3台しかないのに私は吃驚した。数年前には、夕食時には車を入れるスペースを探すのに苦労するほど何台もの車が停まっていた。この変貌ぶりが信じられなかった。
 食事が終って車に乗り込むとき、F.H.が、「このレストランって、どうも経営者が代わったみたいよ。それから、客が減ってきたみたいなの。」と言う。
 私には一見、昔と変わらないように思えたが、そう言えば、パスタ料理のメニューが代わった気がするし、シェフの顔ぶれも代わったような気がしてきた。陽気で甲斐甲斐しく動き回っていた以前の店員と違って、客に対するサーヴィスの質もまた低下したようだ。ほんのわずかな差かも知れないが、少しずつ、その差が客に伝わっていくと知らない間に<It's gone downhill>ということになってしまうのであろう。そうした傾向は、日本もカナダも同じなのかも知れない。
 少なくても、私とF.H.の思い出のレストランは、変らず<It's as good as it used to be.>であってほしい。

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