たちまち懐かしさが込み上げてきた

 昨日はアルバイト先で午後3時まで仕事で、少々疲れ気味ではあったが、名古屋にある外国語学校I.C.NAGOYAの英会話の授業を受けに行った。
 教室でひとり授業の開始を待っていると30代と思われる一人の男性が教室に入ってきた。挨拶の仕方や何気ない素振りが、どうも日本人ではないと私は感じて、思い切って国籍を聞いてみた。モンゴル人で、名前をパンだと教えてくれる。
 大相撲のモンゴル人力士の話題をすると、「わたし、モンゴル人ですが、今は中国の内モンゴル自治区に住んでいます」と少し覚束ない日本語だが一生懸命に話し掛けてくれる。よくよく聞いてみると、家族と共に小学生のときに中国のモンゴル地区に移り住んだらしい。服装からすると留学生なのであろうか、初対面ではそこまでの話は聞けない。
 すると、ショートヘアで少し短めのアゴひげをたくわえた英会話講師が教室に入ってきた。初対面なので、当然の如く自己紹介をし合ったが、彼は、どちらが生徒か先生なのか分らないほどに緊張していて、むしろ、教えてもらう側の私の方が恐縮してしまった。
 きっと、根は真面目で正直な性格で、失礼を省みず外観から判断するだけだが、アメリカにいるご両親は、おそらく私より年下だと思われる。歳を聞くのは非礼だと以前、スペイン人のHose先生に西欧文化と日本文化の違いという講義の中でさんざん聞かされていたので、敢えて尋ねなかったが、出身地はアメリカのワシントン州で、名前はDanと教えてくれた。I.C.NAGOYAでの授業も今日で2日目で、まだまだ英語を教えるのに慣れていないので、分らないことがあったら、何でも聞いてほしいと真顔で話してくれる。
 一年ぶりの初っ端の授業としては、今日は難しいテーマにぶち当たってしまったようだ。
 その難しいテーマというのは、「The Universal Declaration of Human Rights」で、人間が人間らしく生きる上で、誰も犯してはならないさまざまな権利についてディスカッションしようという授業である。
 世界の中で比較的に「Human Rights」が尊ばれている日本では、通常の生活の中で、こうした基本的人権に関する問題で真剣にディスカッションするということは少ない。
 Danが真っ向から切り込む形で生徒に向かって、「Do you know places where people do not have some of these human rights?」と尋ねてきた。
 真っ先にモンゴル人のパンさんが手を上げた。
 パンさんは中国政府の<一人っ子政策>は、明らかに「Human Rights」を犯していると言い、同じ罪を犯しても、中国政府は中国人と他の民族(例えばモンゴル人やチベット人)を差別して、平気で刑罰を重くしている。中国という国の中には「Human Rights」を持たない人々が多く存在していると自分の意見を述べた。
 そして、今は何か事件が起きるとインターネットで情報が中国中に流れ出て、その情報の早さと正確さにモンゴル自治区当局も力ずくで隠蔽しようとしても抑えきれなくなって、不当な弾圧や拘留はだんだん減ってきていると言う。
 パンさんはさらに、「Human Rights」が犯されている幾つかの具体例を上げていたが、今まで聞けなかった中国内の実情を聞いているようで、妙なリアリティーがあり、いつしか私の背中に寒いものが走っていった。
 久し振りの80分授業はさすがに長い。
 授業が終わり、教室のドアを開けて帰り掛けるとアメリカ人英会話講師のPaul とぶつかりそうになった。Paulの驚きの顔が、私だということが確認できた途端、表情が満面の笑みに変わり、自然なかたちで両手で握手を求めてきた。私も握手を返し、Paulの表情を見ていたら、たちまち懐かしさが込み上げてきて、顔がほころび出した。 

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