ヒカレものの呟き

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zoom RSS リストラがもたらしたブラックボックス化

<<   作成日時 : 2006/12/03 18:56   >>

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 私がいた会社では、バブルがはじけ、デフレ時代に突入していった頃、バブル時代のヴェテランを格下げしたり、非常識な賃金カットをし、人事刷新の名の下に窓際に追いやったり、精神的に圧力を加え、辞職せざるを得ない状況に追い込んでいったりしてした。
 一方、実力成果主義を振りかざし、実力の伴っていない者を抜擢したり、親会社からの出向者を幹部に招聘したりした。
 そうしたやり方にまず、三十代前半の油の乗り切った、これから会社を背負っていかなければならない熟練者たちが相次いで会社を去っていき、その次に、余りにも大きな賃金カットに、住宅ローンなどまだ銀行への支払いを抱えた四十台前半の者が会社を辞めていった。
 技術的にまず困ったのは、三次元ソフトであるCatiaのデータを解析できる者が、四人から一人になった上、実際に第三者が目に見えるような図形にしたり、図面化したりするCAD−CAMのハードを操作し展開できる者が、今まで五人いて、常時必要に応じてプリントアウトできてたものが、二人となってしまったため、急な対応ができず、業務に支障をきたしてしまう始末である。その後、他社からヘッドハンティングで二人増員されたが、自動車部品を扱ったことのない人たちであり、すぐ戦力となるには少なくても一年以上は時間が必要だった。
 その次に、熟練者が辞めていって、支障をきたしたのは、溶接加工や機械加工用のゲージや治具の設計である。溶接加工、機械加工は加工順序を間違えると、図面通りの製品は到底できない。その加工順序を決め、ゲージや治具の構想を自らの力で考えることができるようになるまでには、その仕事に一日中従事していても、最低でも溶接加工では五年、機械加工でも三年掛かるであろう。
 私は、板金の塑性加工(一般にはプレス加工)については信頼できる技術者が退職せず、残っていたので心配していなかったが、溶接加工、機械加工については、技術部の能力を信頼できず、加工順序は私が決め、ゲージや治具の構想は、技術担当者にいちいち指示し、ゲージや治具の図面が完成した時点で私はチェックした後、製作を許可していた。
 本来なら、加工順序やゲージ、治具の構想の理由を事細かに、技術担当者に教え込まなければならないが、私には退職するまでの時間がなかった。ゲージや治具が完成し、現場での最初のトライのとき、その都度詳細に説明してきたが、当然、短時間で教えても全部が全部、分る筈もない。
 微妙な金属加工には、人間の腕と感性でしか仕上げられない領域があり、それはもう「匠」の世界としか表現できない。昨今、「見える化」と呼ばれ、何もかも工作指示書(場合によってはQC工程表と呼ぶこともある)に、加工順序、加工ポイント、品質チェックポイントなどを加工部所に掲示してあるのが普通であるが、この「匠」の領域までは書くことはできない。それは昔から、OJT(On the Job Training)で、先輩の仕事ぶりから、後輩が盗み取って身に附けてきたものである。Off JTでは決して掴みきれない「匠」の世界であり、それがまた言葉を変えれば、Now Howなのである。
 急激なリストラは、そうした「匠」の技をブラックボックス化してしまい、場合によっては、基本的な技術の伝承さえも危うくしていったのである。
 2008年から団塊の世代の退職の時期を迎える。団塊の世代が培ってきた「匠」の技が大量に喪失する可能性は深まるばかりである。
 今こそ、リストラを焦った会社は、去った熟練者たちを呼び戻し、技術の伝承を真剣に再考する時期が来ているのではないだろうか。

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