ヒカレものの呟き

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<<   作成日時 : 2008/07/17 22:52   >>

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 昨日、7月16日付の中日新聞のコラム「中日春秋」を読んでいたら、詩人新川和江さんの代表詩 『わたしを束ねないで』の冒頭部分を引用し、われわれは「最近の若者」という言い方をはじめ、よくよく束ねることが好きなようで、実は、そういうわらわれ年代も、若者から「世間のおじさんたちときたら」と束ねられている訳で、多くの人は、一握りの不届きな人を見て、その所属集団を全て不届き者だと「束ねられて」いることを、不愉快に思っているのではないかと述べている。
 まさに正論というべきであろう。と偉そうに言っても、私もサラリーマン現役の頃は、「最近の若者は」と上から目線で、何もかも分かった振りして、若者を負の一面ばかり見ていて、ひとりひとりの個性や相違性を認識せず、「最近の若者は」と一括りで論じていたような気がする。
 ところが、会社をRetireし、名古屋にある外国語学校I.C.NAGOYAのグローバルビジネス科で英会話を勉強するようになり、キャリアアップを目指す多くの若い女性たちと話し合うようになってから、私は若い人たちに対して、知らない間に、それこそ、多くの曲解と木を見て森を見ないような杜撰な偏見を持っていたことに気付かされた。
 決して、「最近の若者」などと、束ねて論ずることなどできないし、一介の個人に過ぎない私が、人の生き方に口を挟んで、上から目線で論ずることなど、おこがましくて、失礼この上ないことだということにも気付かされた。
 それほどに、英会話学校で、自分のこれからの生き方に夢を持ち、前向きに生きていこうとしている多くの姿に出会い、その生き甲斐がもたらす積極的な心の在り様に触れ、今までの虚勢に振り回されていた自分と対比し、単純に、そうした人たちと不思議な非日常の空間を共有することに感動していたのである。
画像 そんなことを思い起こしながら、「中日春秋」というコラムを読んでいた。実は、恥ずかしい話であるが、私は勉強不足で、小中学校の国語の教科書にも載っていると言われる新川和江さんの『わたしを束ねないで』という詩を、今までに読んだことがなく、改めて、今日、じっくりと読んでみた。
 【わたしを束ねないで・・・ わたしは稲穂】【わたしを止めないで・・・ わたしは羽撃き】【わたしを注がないで・・・ わたしは海】【わたしを名付けないで・・・ わたしは風】【わたしを区切らないで・・・ わたしは終わりのない文章】 何と真新しくて、心強い言葉であろうか。ひとりの個性を持った人間として、強く生きようとする弛まぬ意思が、静かにじっくりと読む者の心に突き刺さってくるようである。
 特に、4フレーズ目の【わたしを名付けないで 娘という名 妻という名 重々しい母という名でしつらえた座に 座りきりにさせないでください わたしは風 りんごの木と泉のありかを知っている風】という箇所は、一昨年の6月から8月、グローバルビジネス科で一緒に英語を勉強したクラスメートたちのモチベーションを彷彿とさせてくれる。私は読み終えたあと、言い様のない感動に浸っていた。
 新川和江さんの『わたしを束ねないで』という詩は次のようである。

 【わたしを束ねないで】 新川和江
  
  わたしを束ねないで 
  あらせいとうの花のように 
  白い葱のように
  束ねないでください わたしは稲穂
  秋 大地が胸を焦がす
  見渡すかぎりの金色の稲穂

  わたしを止めないで
  標本箱の昆虫のように
  高原からきた絵葉書のように
  止めないでください わたしは羽撃き
  こやみなく空のひろさをかいさぐっている
  目には見えないつばさの音

  わたしを注がないで
  日常性に薄められた牛乳のように
  ぬるい酒のように
  注がないでください わたしは海
  夜 とほうもなく満ちてくる
  苦い潮 ふちのない水

  わたしを名付けないで
  娘という名 妻という名
  重々しい母という名でしつらえた座に
  座りきりにさせないでください わたしは風
  りんごの木と
  泉のありかを知っている風

  わたしを区切らないで
  ,(コンマ)や ・(ピリオド) いくつかの段落
  そしておしまいに「さようなら」があったりする手紙のようには
  こまめにけりをつけないでください わたしは終わりのない文章
  川と同じに
  はてしなく流れていく 拡がっていく 一行の詩   
  
  「比喩でなく」より

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