神様に内緒で、何を祈ったのか教えてくれよ!
男は、はじめての女性と付き合い始めると、デートコースとして、ときどき神社仏閣にお参りに行くことがあった。
男はこれまでの経験から、神社仏閣に行くと、女性の意外な側面を見ることができると、さしたる理由もなく思い込んでいた。
男は35歳になるが、そんな自分の思い込みを信じて、うまく付き合っていけると思った何人かの女性たちと、あちこちの神社仏閣に出掛けていった。
男は神社仏閣で二 礼二拍一礼をしたり、合掌したりする相手の姿から、自分との付き合いが真剣かどうかのリトマス試験紙になる、そんな確信に近い思いもあった。
だが、リトマス試験紙の結果は、誰一人として男の意向に沿った色には変色してくれなかった。
そうは言っても、男本人は合掌するのもおざなりな仕種で、外見からはそれらしい振る舞いをしていていても、心を込めて祈ったことは一度もなかった。
それは、子どもの頃から何か真剣に祈っても、自分の周りの状況や自分の精神状態が変わったということはなかったし、ただ単に祈るとい行為だけで何かが変わるなどという非現実的なことを信じることができなかったからだ。
男はまた、特定の宗教に拘っている女性も苦手であった。
付き合っている女がもし、特定の宗教に拘っていることが分かったなら、即座に交際続行を停止する。
自分の力の及ばない世界があり、その小宇宙の中で自分が生かされているとは感じることはあっても、単に神社仏閣の前で手を合わせ、ひたすら祈るだけで、神様のご加護が得られるなどということが、この世に起こりうるとはどうしても思えない。
男は36歳になったころ、バツイチでしかも3人の子持ちの女と知り合った。
女とはじめて食事に行ったとき、彼女が無宗教ではあることは分かったが、デート中の其処ここに、名もない神社があったり、道ばたに地蔵が密かに祀られていたりすると、必ず彼女は熱心に、しかも時間を掛けながら、神妙に手を合わせていた。
男はその姿を見て、思い付くまま、愛知県江南市にある曼荼羅寺公園に藤の花を観に行こうと誘った。
2人は知り合ってまだ間もないこともあり、その時点では女が神や仏に対して、どんな気持を抱いているのか、男には全く分らなかった。
だが、曼荼羅寺で長い間、じっと目を閉じ、胸の前で両手を合わせている姿を見て、男は意外とこの人は信心深いかも知れないと思った。
それと同時に、その女の祈る後ろ姿は、おざなりで真剣に手を合わせたことがなかった男には、なぜか新鮮に映った。
男が半分冗談のつもりで、「神様に聞こえないようにこっそり、何を祈ったのか教えてくれよ!」と言うと、女の口からは「子供たち3人の健康と、今受験勉強中で頑張っている子供の希望校への進学を祈ったのよ」という紋切り型の答えが返ってきた。
男は冗談口調で、「だったら、俺は2人が来年もここへ来れますように、と祈ることにするよ!」と言うと、一瞬、彼女はむっとした表情になって「デートの最中に、そんな縁起でもないことは、普通は口に出さないものなのよ!」ときっと睨みつけられ、諭される。
男は強い口調で「これからもずっと付き合いたいと、自分の気持を正直に言っただけだよ!」とささいな喧嘩が始まる。
2年目の藤の季節にも、2人で曼荼羅寺へ出掛けて行き、同じように小さな声で「神様に聞こえないようにこっそり、何を祈ったのか教えてくれよ」と男は囁くように訊ねる。
すると女は「去年と同じよ、子供たち3人の無事健康を祈っただけ!!」とそっけなく答える。
3年目もしつこく同じ時期に曼荼羅寺を訪れ、鈴を鳴らし合掌している女に向い、性懲りもなく「神様に内緒で、こっそり教えてくれよ!!」と懇願する。
女は小さな声で、「二人の将来のことよ!!!」と言ったきり、あとは何も語らなかった。
男はこれまでの経験から、神社仏閣に行くと、女性の意外な側面を見ることができると、さしたる理由もなく思い込んでいた。
男は35歳になるが、そんな自分の思い込みを信じて、うまく付き合っていけると思った何人かの女性たちと、あちこちの神社仏閣に出掛けていった。
男は神社仏閣で二 礼二拍一礼をしたり、合掌したりする相手の姿から、自分との付き合いが真剣かどうかのリトマス試験紙になる、そんな確信に近い思いもあった。
だが、リトマス試験紙の結果は、誰一人として男の意向に沿った色には変色してくれなかった。
そうは言っても、男本人は合掌するのもおざなりな仕種で、外見からはそれらしい振る舞いをしていていても、心を込めて祈ったことは一度もなかった。
それは、子どもの頃から何か真剣に祈っても、自分の周りの状況や自分の精神状態が変わったということはなかったし、ただ単に祈るとい行為だけで何かが変わるなどという非現実的なことを信じることができなかったからだ。
男はまた、特定の宗教に拘っている女性も苦手であった。
付き合っている女がもし、特定の宗教に拘っていることが分かったなら、即座に交際続行を停止する。
自分の力の及ばない世界があり、その小宇宙の中で自分が生かされているとは感じることはあっても、単に神社仏閣の前で手を合わせ、ひたすら祈るだけで、神様のご加護が得られるなどということが、この世に起こりうるとはどうしても思えない。
男は36歳になったころ、バツイチでしかも3人の子持ちの女と知り合った。
女とはじめて食事に行ったとき、彼女が無宗教ではあることは分かったが、デート中の其処ここに、名もない神社があったり、道ばたに地蔵が密かに祀られていたりすると、必ず彼女は熱心に、しかも時間を掛けながら、神妙に手を合わせていた。
男はその姿を見て、思い付くまま、愛知県江南市にある曼荼羅寺公園に藤の花を観に行こうと誘った。
2人は知り合ってまだ間もないこともあり、その時点では女が神や仏に対して、どんな気持を抱いているのか、男には全く分らなかった。
だが、曼荼羅寺で長い間、じっと目を閉じ、胸の前で両手を合わせている姿を見て、男は意外とこの人は信心深いかも知れないと思った。
それと同時に、その女の祈る後ろ姿は、おざなりで真剣に手を合わせたことがなかった男には、なぜか新鮮に映った。
男が半分冗談のつもりで、「神様に聞こえないようにこっそり、何を祈ったのか教えてくれよ!」と言うと、女の口からは「子供たち3人の健康と、今受験勉強中で頑張っている子供の希望校への進学を祈ったのよ」という紋切り型の答えが返ってきた。
男は冗談口調で、「だったら、俺は2人が来年もここへ来れますように、と祈ることにするよ!」と言うと、一瞬、彼女はむっとした表情になって「デートの最中に、そんな縁起でもないことは、普通は口に出さないものなのよ!」ときっと睨みつけられ、諭される。
男は強い口調で「これからもずっと付き合いたいと、自分の気持を正直に言っただけだよ!」とささいな喧嘩が始まる。
2年目の藤の季節にも、2人で曼荼羅寺へ出掛けて行き、同じように小さな声で「神様に聞こえないようにこっそり、何を祈ったのか教えてくれよ」と男は囁くように訊ねる。
すると女は「去年と同じよ、子供たち3人の無事健康を祈っただけ!!」とそっけなく答える。
3年目もしつこく同じ時期に曼荼羅寺を訪れ、鈴を鳴らし合掌している女に向い、性懲りもなく「神様に内緒で、こっそり教えてくれよ!!」と懇願する。
女は小さな声で、「二人の将来のことよ!!!」と言ったきり、あとは何も語らなかった。
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