虫干しされていたサラリーマン時代の衣服

 年末年始に4日間も仕事が入っていて、その忙しさが一段落した今日の起床は珍しく午前8時を過ぎていた。
 カーテンを開けると雲一つない空が広がっている。その空からは温かい陽光が射してきて、まぶしいほどであった。
 ふとベランダを見ると私の冬用のジャケット、セーター、カーディガンなどが虫干しされている。何なんだ、これは!!
 慌てて、一階に下りていくと日当たりのいいガラス戸辺りにもサラリーマン時代のスーツが何着も干してある。
 私が起き出してきたことに気づいた女房が、「今虫干ししてある冬物の中で、いらない物を教えてよ!資源ゴミの日に捨てに行こうと思っているから」といかつい形相で言ってくる。
 会社をRetireしてから6年半、季節は何度も変わってきたが、私の着る物は限られていた。つまり、今虫干しされている衣服は過去のもので、久しぶりに目にしたものばかりである。
 現役サラリーマン時代には夏冬の営業用のユニフォームジャケットの他に、スーツは夏服、合服、冬服をそれぞれ2着持っており、そしてレジャー用としてブレザージャケットは合服と冬服を1着ずつ持っていた。
 当然ながら、礼服も夏、合服、冬と3着持っていた。営業担当としての必需品だと思っていて、ボーナスのたびに購入してきたものだ。
 サラリーマン時代には衣替えの日がやって来ると、その数日前から女房は急に忙しくなる。
 言うまでもなく、衣替えとは季節の推移に合わせて衣服を着替えることであり、6月1日が夏用に切り替える日であり、10月1日が夏用から冬用に着替える日である。その衣替えの日が近づくと、女房は押し入れの夏用、冬用と書かれた段ボールを引っ張り出してきて、すべての段ボールの入れ替え作業をしなければならない。
 考えてみれば、夏服が4ヶ月で、冬服が8ヶ月ということになるが、さらに考えてみると、本格的に夏服になるのは6月下旬からで、冬服になるのは概ね9月下旬からなので、夏服の着用は正味3ヶ月ということになる。
 実際は冬服と言っても春秋用のジャケットやスーツを着る期間もあり、さらに下着やヴェストで調節しながら、季節の移ろいに対応していくので、衣替えの切り替え日は6月1日と10月1日かも知れないが、私たちはその都度、四季折々でマイナーチェンジをしていくことになる。生活の知恵と言っていいのかも知れない。
 衣替えの日がやってくると、いつも気づかされることがある。
 いやはや、去年の冬には丁度ピッタリのズボンがきつくなっていたり、ワイシャツの手首のボタンが嵌めにくくなっていたり、ジャケットの肩幅が窮屈になって違和感を感じて、少しばかり自分自身に幻滅を感じたりすることになる。
 衣服の方は半年近く押し入れに眠るように仕舞われてあったのだから、明らかにこちらの身体の方が変化したのは否定のしようがない。
 営業担当を何十年もやって来ると、得意先の接待のお相伴で、アルコールは鯨飲するかのごとく、普段は到底食べることができない贅沢な料理もここぞとばかりに残さず食べる。当然のように、スポーツに没頭する成長期の子どもではないので、そのしわ寄せは腹回りの増大となって、表面に現れることになる。
 今日の衣服の虫干しは、そうした暴飲暴食の時代を嫌でも思い起こさせてくれた。

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