それは顔が紅らんでくるような青春時代の1コマであった

 9月25日に高校の同学年だけの同窓会をやるとの案内状をもらってから、改めて色んな事を思い出すようになった。特に先だって、高校で同じクラスだったOHが47年振りに電話をくれたこともあって、突然、高校時代のことが映画の1コマのように浮かんでくることがある。その映像はやはりセピア色である。
 昨日もアルバイト先で午後1時から8時まで仕事であったが、午後6時にはすべての作業が終わって、一人事務所でコーヒーを飲んでいたら、急に「ツンツン節」のメロディーが浮かんできた。
 私は高校2年の2学期に入って間もなく、よそのクラスの顔見知りの人間に誘われて、中部地方の高校で始めて「落語研究クラブ」、通称「落研(オチケン)」を立ち上げた。月に2回ほどの集まりだったが、そのときに、後で仲がよくなったS.H.とよく替え歌を作ったものである。
 当時、「早稲田ツンツン節」という歌が風の頼りに伝わってきて、そのとき落研(オチケン)部長になっていたS.H.と私で、我が母校の「ツンツン節」を作ろうということになった。替え歌の歌詞の原案は私が作り、S.H.が手直しをする。確か、そんな段取りで歌詞を作ったような気がする。
 ああでもない、こうでもないと言いつつも、1日か2日でできあがったように思う。大変だったという記憶がまったくないのは、「ツンツン節」は色んな大学で替え歌を作っていて、幾つもベースになる歌詞があったからだと思われる。
 実は、47年も前のことなので、とうに忘れていたと思っていたが、口ずさんでみるとすらすら歌詞がでてくるではないか。
 私にとっては、嬉し懐かし「ツンツン節」、私は会社に誰もいないことをいいことに、何度も何度も口ずさんでいた。
 <刈高ツンツン節>
   僕は真面目な刈高生 胸に五つの金ボタン
   襟のバッジは伊達じゃない 魔除け虫除け女寄せ
   君も刈高の1年生 花のエンジのセーラー服
   僕が高校出る時にゃ 親と親とのいいなずけ
   僕が大学出る時にゃ 金金島田に由井ヶ浜
   新婚旅行の汽車の中、触れ合う手と手の恥かしさ
   熱海の旅館の床の中 処女よさらばと目を閉じて
   わたしこの頃変なのよ もしやあれではないかしら
   もしも男が生まれたら きっとあなたに似てるでしょう
   もしも女が生まれたら きっと君に似てるだろう
   十月十日の日も過ぎて 始めて子どもの親となる
   生まれた子どもは親に似て 酒に煙草に女好き
 私たちの作ったこの歌詞が、どこから漏れたのか、お茶ノ水大出身の女性教師に耳に入ってしまった。
 女性教師の年齢はと言えば、丁度私たちの母親の年代で、常々校風である質実剛健を口にしていた厳しい先生で、実を言うと、私もS.H.もこうしたタイプが最も苦手であった。
 私たちは職員室に呼び出された。確か、S.H.と私、そのほかにもう一人いたと思われるが、それが誰なのかは今俄かに思い出せない。
 女性教師は、あなたたちが歌うふざけた歌は我が高校の校風に合わないから、今後歌うのは厳禁と私たちは言い渡された。そして、先生は必死で「偽悪者は偽善者よりもタチが悪いのよ。もうふざけるのは止めなさい。これからの1年があなたたちにとっては正念場の時期なのよ。よく考えてみて!」と私たちを諭す。
 大事な時期だということは私たちも分かっていた。ただ、大学受験のプレッシャーを和らげるために、せめてこんな歌でも歌って、息抜きがしたかったというのが私たちの本音だった。
 さすがにその後は学校で大声で歌うことはなかったが、みんなが誰かの家に集まると、性懲りもなく手拍子付きで<刈高ツンツン節>を歌っていた。みんなの気持が繋がるような気がしたからだ。
 それは今から思うと顔が紅らんでくるような青春時代の1コマであった。

 【参考】
 <早稲田ツンツン節>
   僕は早稲田の大学生 胸に稲穂の金ボタン 
   私 目白の二年生 燃ゆる思いのセーラー服 
   互いに想う仲なれど 二人は親のスネかじり 
   僕が早稲田を出る頃は あなたも目白を出る頃ね 
   僕が早稲田を出た時は 文金島田で僕の妻 
   新婚旅行の汽車の中 触れ合うヒザの恥ずかしさ
   十月十日の日が経てば 可愛い子供の誕生日 
   生まれる子供が男なら 僕の早稲田に入れましょうね 
   生まれる子供が女なら 私の目白に入れましょうね 
   生まれる子供が男なら ツンツン節を教えましょう 
   生まれる子供が女なら お茶とお花を教えましょう 
   十月十日の日が満ちて 可愛い坊やが出来ました 
   昔なつかしラブレター 今じゃ坊やの鼻紙よ 
   生まれた子供は親に似て 酒に煙草に女好き 
   歴史は巡る五十年 諸行無常の風が吹く 

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