私は悩ましい問題を抱えてしまったようだ

 昨夜の午後8時半ごろ、PCを開いてニュースを読んでいると女房が電話の子機を手に持って、「N大学で一緒だったOHさんという人から、電話が入っているけど、どうする?」と聞いてきた。
 以前、高校の同窓生とかN大の同級生とか名乗って、株券や証券の勧誘の電話がたびたびあったので、今回も女房はそんな勧誘の電話かと警戒しているようだった。
 だが、私はピンときた。N大の学生の頃に仲がよかった、あのOHではないかと思ったのだ。電話に出てみると、いきなり「Issaか?」と尋ねてくる。やはり、OH だった。47ぶりで声を聞くことになる。
 N大学では、同じ高校出身の同級生は10人ほどいたが、私はあまり付き合わなかった。理由は簡単で、私が1年浪人して入学したので、ヒガミがあった上に同じ学部の者でもまず一緒に授業を受けることがなく、入学した年度だけは偶然会うと食堂で話をしたりはしたが、その年に英文科に入学したのは私だけのこともあり、数ヶ月もすると次第に疎遠になってしまった。
 その中でただ一人、高校の同級生でクラスメートのOH だけは、気が合ったのか、彼が卒業するまでの3年間、お互い気のおけない友だち付き合いをしたものの、それもまた、いつの間にか疎遠になってしまった。
 辛うじて思い出すのは、3年連続で大晦日から元旦に掛けて、彼の家に泊まりにいった覚えがあるし、彼が運転免許証を取得してからは、何度か彼の車に便乗して登校した覚えもある。
 確か、彼の車は当時人気のあった三菱のコルト800で、学生の身分でそんな車に乗れる彼のことをものすごく羨ましく思った記憶もある。だが、そんな彼も意外と硬派で、私と一緒の行動していた3年間、付き合っていた女の子はいなかったように思う。
 それと47ほど前のあのころは、まだN大学の近辺は住宅もまばらで路上駐車が可能だったような気がする。
 悲しいが、彼のことで思い浮かぶのは、そのぐらいのことしか思い出せない。
 まずOHは先月の始めに、高校の同窓会開催の案内が届いたかどうかを尋ねてきた。
 高校を卒業してから、私は47年間、没交渉で同じクラスで親しかったヤツらとも会ってないので、案内状が届いてから2、3日、熟慮したが、結局欠席することにしたと説明すると、OHは<自分も東京支社に27年間も勤務していたので、同じクラスの人でもあまり顔見知りの人間がいない。気軽に話せるのは Issaぐらいしかいないので、ぜひ一緒に出席してほしい>と言うのである。
 確か、彼はトヨタ自動車系列の中堅企業に入社し、しかも得意な英語を活かして海外取引を主要業務とする商事部に配属になったはずである。しかしサラリーマンの宿命で、数年後、東京支社に配属を命ぜられて、27年が経ち、今年3月で職を解かれて、生まれ故郷に帰ってきたばかりとのことである。彼もまた、企業戦士だったのだ。
 そして、今は自宅にこもって悠々自適の生活で、そんなときに高校の同窓会開催の案内が舞い込んで、あの頃の顔が懐かしく思い出されてきて、誰か知っている人間と一緒に出席したいとの気持が日に日に募ってきたらしい。
 そう言えば、高校の同級生で、慶応大学在学中にニューヨークに留学して、そのまま現地の女生と結婚してアメリカに居ついてしまった人間がいて、私はその人間から突然長文の手紙をもらったことがある。
 帰国もせずに20数年も現地にいると高校時代の事が懐かしく思い出されて、つい手紙を書いてしまったが、できたら文通をしてほしいという内容だった。今から20年ほど前のことである。
 私は営業担当を任されて、丁度脂が乗ってきた時期と重なって、はい、そうですかとその人間の思いをすんなり聞き入れることができなかった。そのことに関しては、今、何の後ろめたさもない。
 47年ぶりに電話を掛けてきたOHとあのとき手紙をくれた高校の同級生の気持がオーバーラップする。
 同窓会に出席するかどうか、47年ぶりのOHの話を聞いてしまっただけに、私は悩ましい問題を抱えてしまったようだ。

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