Pardon!Pardon!Pardon!

 私はまったくキザで嫌なヤツだ。
 私は没頭し出すと前後の見境がなくなってしまうタチで、ついつい頭に切り替えができずに失態を演じてしまう。決して悪気がある訳ではない。
 またぞろ、英会話の勉強がしたくなったせいでもあるまいが、先だってもコンビニから出ようとしたときに30代のご婦人にぶつかりそうになって、思わず「Pardon!」と口走ってしまった。すぐに「失礼!」と言い換えたが、そんな自分を振り返ると顔が赤らんできて、しばらくすると腋の下に冷や汗が滲み出てくる。
 以前から、私は英会話を習っているとき、さまざまな状況で「Thank you.」と「Pardon.」という言葉をよく使っていた。思わず口を突いて出てしまったのは、そのせいだ。別に他意はない。
 私が好んで「Pardon.」を使っていたのはとても便利な言葉だと思っていたからだが、「Thank you.」は人間関係の潤滑油として有効な言葉だということには誰も異論は挟まないだろうけれど、「Pardon」は同じ英語圏でも国によってニュアンスが違うことに、ここ2、3年、I.C.NAGOYAで英会話を習ってきて気付いた。とくにアメリカ人には気になる言葉のようだ。
 私は大学で英文学を勉強していたが、そのとき日本人の教授から「Pardon」という言葉は語尾を下げれば「許してください」と言う意味となり、語尾を上げれば「もう一度言ってください」、つまり「Once more, please.」の丁寧な言い方になると教えられた。また別の授業の英会話のドイツ系アメリカ人教授には、「Pardon」は「Excuse me.」の意味でもよく使うと教えられた。
 と言うことは、「Pardon」という言葉は、TPOを弁えてさえいれば、さまざまな使い分けが可能な言葉だと私は勝手に解釈して、学生時代はよく口にしていた。
 会社をRetireしたあと、職業訓練として45年ぶりにI.C.NAGOYAで英会話を勉強することなって、私は昔の記憶を呼び覚まして、したり顔になってこの「Pardon」をたびたび使ったが、そのときの先生がカナダ人とニュージーランド人だったこともあり、何の違和感なく受け入れてくれた。
 ところが職業訓練としての授業が終わってから、再びI.C.NAGOYAで英会話を勉強するようになって、アメリカ人英会話講師のDanielに向かって、同じように「Pardon」という言葉を使うと、私は彼から「誤解されるから、余り使わない方がいい」と意外なアドバイスを受けてしまった。
 アメリカ人のDaniel が言うには、「Pardon」という言葉は実に雑で、いい加減な言葉で「おや、失礼」といった程度の挨拶で使ったり、冬にオーバーコートに触れても「Pardon」と言い、電車の中で足を踏んづけても「Pardon」で済ませてしまうし、夢中で世間話をしている二人の間に割って入るのも、やはり「Pardon」と言うそうである。さらに言えば、語尾を上げて強く言えば「ボヤボヤするな」「さっさと歩け」と言う意味にもなると言うのだ。つまり、丁寧な言い回しどころか、ぞんざいな言い方として、相手の気分を損ねかねない言葉だというのである。
 そう言えば、Native Speaker同士で、「Pardon」という言葉を交わしているのを私は1度も聞いたことがない。最近、意識的に使わないように心掛けてきたが、若い頃の口癖はなかなか直せないようで、咄嗟のときには口を突いて出てきてしまうものらしい。
 「Thank you.」と「Pardon.」という言葉は、日本人同士の英会話で話している分には、傍目からは人間関係が上手くいっているように見えるのだが、英語圏の人がその場にいたのなら、日本人は何と個性のない詰まらない会話をするのかと心の中で呆れているのかも知れない。
 外国語の言葉の根底にあるニュアンスを正確に把握するのには、かなり多くの時間が必要のようである。

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