地下鉄の乗客たちは 大袈裟にマスクをし出した
今日、『The New York Times』の電子版を読んでいたら、【Spread of Swine Flu Puts Japan in Crisis Mode(新型インフルエンザの拡大は日本を危機モードの状態にした)】という見出しで、日本の新型インフルエンザについての記事が載っていた。地下鉄で、深刻そうな表情でマスクをした乗客の写真が掲載され、次のようなコメントが添えられていた。
<With concerns over swine flu gripping Japan, passengers on the Tokyo subway donned masks on Thursday. (新型インフルエンザの感染が日本の最大の関心事で、木曜日には、東京の地下鉄の乗客たちは大袈裟にマスクをし出した)>
日本人すべてがマスクをすれば、感染は防げると思い込んで大袈裟に騒ぎ立てる日本人気質を強烈に皮肉っているようにも受け取れる。
3年前、名古屋にある外国語学校I.C.NAGOYAのグローバルビジネス科で英語を一緒に勉強したクラスメートのKyokoさんは、現在、アメリカのサンフランシスコの大学に留学し、教授からゼミに与えられたテーマに四苦八苦、レポート作成に悪戦苦闘している様子だが、そのKyokoさんが、クラスの掲示板に近況を書き込んだ文章を読ませてもらうと、どうも、最近のアメリカでは新型インフルエンザの記事はマスメディアも殆んど取り上げないし、まして、地下鉄に乗ってもマスクをした市民に出会うこともなく、日本とアメリカの国民性の違いに改めて気付かされたと述べている。
アメリカでは、感染が見つかってはいるものの、日本では症状は軽く死者も出ていないのに(mild flu cases and no deaths)、あまりに大袈裟に騒ぎすぎではないかという意見が大半だと言う。

どうも、ヨーロッパも同じような感覚らしく、5月2日付のイギリスの『The Times』紙に、豚一頭の部位をさまざまな課題に見立てて、新型インフルエンザと同様な重要度合いである、<経済、イラクやアフガンへの派兵問題、You Tubeに横行するプライベート侵害問題>などを政府は一刻も早く切り込んで処理をしなければならないのに、< swine flu >ばかりに掛かりきりでいいのかと揶揄しているCartoonが掲載されていた。
その後、そのことが引き金ではないだろうが、新型インフルエンザの記事がトップ記事になることはなくなった。そのことは、イギリスではもっと深刻に対処しなければならない<Issue>を抱えているとイギリス全体が気付いた証明なのかも知れない。
日本でももっと早急に対処しなければならない問題があるように思えてならない。
一週間ほど前に、昨年1年間の自殺者の数が、32,249人と報道されていた。その人数の多さに吃驚する。このままで推移すれば、私が住んでる愛知県大府市などは、3年間で消滅してしまうほどの多さなのである。
自殺者の年齢や性別、自殺の原因などのデータが分らないが、おそらく、去年の秋から始まった不況が引き金になって、自ら命を絶った人の数もその中の相当な割合を占めているのではないだろうか。
今度の新型インフルエンザの死亡率は、0.4%程度だと言われている。それも糖尿病や腎臓病などと合併症で亡くなる人の割合が非常に多いとも言われている。仮に、新型インフルエンザの死亡率0.4%で、10,000人の死者が出るのには、感染者が250万人に到達した場合である。
糖尿病や腎臓病などの持病を持った人が合併症で亡くなる確立が高いというのなら、そうした人たちに対するピンポイントの対策が必要だし、それより何より、現実の不況で困窮している人たちに文化的で人間らしい生活ができるようなセーフティネットを整えることもまた、できるだけ多くの日本人を救うという観点からすれば、同一レベルで語られるべき緊急な課題ではないだろうか。
日本人の持つ振り子時計はふり幅の大きいのが特徴だが、コンセンサスで優先順序を設定することで、そのふり幅も小さくなり、正確な時を刻むようになるに違いない。
尚、『The New York Times』紙でも、『The Times』紙でも、「 swine flu (豚インフルエンザ)」という言葉を、日本と違って未だに使っている。
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