アンフェアーな社会

 社会保険庁から、老齢厚生年金 加給年金額加算開始の申請をするよう、通知がきた。
 何のことか、さっぱり分らず社会保険庁へ行って聞いてきた。女房も60歳を過ぎ、来年から老齢厚生年金をもらう資格ができた訳だが、失業保険をもらっている間は、老齢厚生年金は支給されない。その間、私の老齢厚生年金で、本来女房が老齢厚生年金に加入していなければもらえた筈の配偶者特別加算分を、女房が失業保険をもらっている期間だけ、月割りで補填することができるので、申請せよという通知なのだ。
 老齢厚生年金は私が三十八年間、女房が四十三年間加入し続けてきた。ところが、夫婦両方とも、老齢厚生年金を二十年以上掛けていると配偶者特別加算分は、女房の方も私の方にも支給されない。
 私はどちらか一方支給されないのは、不満があるにしても、それなりに納得できるが、両方とも支給されないのはずっと納得できないでいた。どちらかに支給されれば、その分だけ半分にして相手に渡せば、それでお互い納得できる。共働きの夫婦はどちらにも負担がかかるものであり、協力し合った結果でもある。いずれにしても、そんな規定があるとは知らなかったし、私たちのように両方とも老齢厚生年金を二十年以上払い続けたものには、そうした配偶者特別加算分が支払れない事を、社会保険庁はもっと周知徹底を計るべきではないだろうか。厚生年金と共済年金、厚生年金と国民年金の併用であれば、その適用はない。何故かここにも不満が残る。
 私はふとイソップの寓話を思い出していた。
 胃袋と足は仲が悪くて、喧嘩ばかりしている。うまい物はみんな胃袋が引き受けているが、俺がいなければ一センチだって動けやしない、というのが足の不平不満である。胃袋の方も「もしも、お前に栄養をあげなかったら、すぐくたばってしまうだろう」と黙っていない。寓話というのは、極めて政治性を持つことがあるもので、ローマの執政官は、いきり立つ民衆をなだめるのにこの話をよく使った。
 「手と足がストライキを起こすと、全身が衰弱して、結局手も足も動けなくなる。」つまり貴族という胃袋は、贅沢三昧で美味い汁を吸い、民衆はおこぼれを頂戴せよという勝手な理屈だが、さすが修辞学に力を注いだローマ帝国だけあって、話が上手い。
 デフレスパイラルを脱するため、「構造改革なくして成長なし」というスローガンのもとで、優勝劣敗を推し進め、競争社会から落ちこぼれた人たちに手を差し伸べるどころか、首吊りの足を引っ張るような施策が、応分負担の名の下に実施されてきた。私たちのこの老齢厚生年金の件についても、この論理が罷り通っているように思えてならない。
 今や、社会の景気はイザナギ景気を超えたと言われている。そんな景気のよさを飲み込んでいるのは、どこの大胃袋であろうか。大企業は軒並みに高利潤を上げ、胃袋は大きくなるばかりというのに、手足の方には一向に栄養が回ってこない。
 全ての人たちにフェアーな結果を持たらすのが、政治の根本姿勢だと思うのは私だけではないであろう。

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