白鳥はかなしからずや
私は退職するとき、別れの言葉の中で、若山牧水の心境だと述べた。
幾山河 越えさり行かば 寂しさの はてなむ国ぞ けふも旅ゆく
白鳥は かなしからずや 空の青 海の青にも 染まずただよふ
「幾山河」の詩歌は早稲田の学生時代、中国地方を旅行した折、友達にあてた手紙の中に書かれたものであり、「白鳥は」は、夫人のために三浦半島の下浦海岸に転居したとき詠まれた詩歌である。二つの詩歌は、年代も場所も牧水自身の心境もかなり違ってはいるが、この有名な二つの詩歌を並べてみると、退職する今の自分の心境にピッタリだと、そのとき私は語った。
サラリーマンになりたての頃、毎日の生活の中にどうして自分なりの生きがいを見つけるか、五里霧中、悶々として暮らしていたときの心境を、私は高校時代の国語の教科書にあった「幾山河」の歌にオーバーラップさせていた。
営業担当を任され、生活に役立つ物づくりを通じて、社会に少しでも関わりができることに自分なりの生きがいを見つけ、サラリーマン時代の後半は売上を上げ、利益を上げて、会社を取り巻く人たちの生活向上を計ることで社会貢献ができると考えていた。
バブルがはじけ、今まで会社に貢献してきた社員の馘首や大幅な賃金カットが実施され、下請け工場の単価引き下げが、会社再生の名の下に何の抵抗もなく実施されるのを目の当たりにして、私はいわれのない違和感と焦燥感を抱いていた。
最も責任を取らなければならない人間は堂々と会社に居残っており、声高に自分以外の者に責任転嫁をし、それがまかり通っていたことに最後まで私は納得いかなかった。当然ながら、そんな話は別れの言葉の中ではしなかったけれど、「白鳥は」の歌の自分なりの解釈は是非話したいと思った。
「白鳥は」の歌の中の、白鳥は自分自身であり、空は今の世の中や社会であり、海は家族係累や恋人であると私は解釈している。空の青、海の青に溶け込み、人並みに幸せを感じていた時期が確かに私にはあった。会社のイメージが壊れ、会社から自分の築き上げてきた価値観を全面否定されるにいたったとき、「白鳥は」の歌が強烈なイメージを持って私に迫ってきた。空の青、海の青に馴染めず、ただ一人虚空を漂う白鳥を、どうしても私は自分自身に投影させてしまったのである。やはり、牧水と同じように私は今も、「かなしからずや」と問いかけているのが正直な自分の気持であり、不覚にも本音でもある。
今月11月で女房が停年退職する。二人で「自分さがし」の旅にでることはできないだろうか。そのことを今、自分に問いかけている。
幾山河 越えさり行かば 寂しさの はてなむ国ぞ けふも旅ゆく
白鳥は かなしからずや 空の青 海の青にも 染まずただよふ
「幾山河」の詩歌は早稲田の学生時代、中国地方を旅行した折、友達にあてた手紙の中に書かれたものであり、「白鳥は」は、夫人のために三浦半島の下浦海岸に転居したとき詠まれた詩歌である。二つの詩歌は、年代も場所も牧水自身の心境もかなり違ってはいるが、この有名な二つの詩歌を並べてみると、退職する今の自分の心境にピッタリだと、そのとき私は語った。
サラリーマンになりたての頃、毎日の生活の中にどうして自分なりの生きがいを見つけるか、五里霧中、悶々として暮らしていたときの心境を、私は高校時代の国語の教科書にあった「幾山河」の歌にオーバーラップさせていた。
営業担当を任され、生活に役立つ物づくりを通じて、社会に少しでも関わりができることに自分なりの生きがいを見つけ、サラリーマン時代の後半は売上を上げ、利益を上げて、会社を取り巻く人たちの生活向上を計ることで社会貢献ができると考えていた。
バブルがはじけ、今まで会社に貢献してきた社員の馘首や大幅な賃金カットが実施され、下請け工場の単価引き下げが、会社再生の名の下に何の抵抗もなく実施されるのを目の当たりにして、私はいわれのない違和感と焦燥感を抱いていた。
最も責任を取らなければならない人間は堂々と会社に居残っており、声高に自分以外の者に責任転嫁をし、それがまかり通っていたことに最後まで私は納得いかなかった。当然ながら、そんな話は別れの言葉の中ではしなかったけれど、「白鳥は」の歌の自分なりの解釈は是非話したいと思った。
「白鳥は」の歌の中の、白鳥は自分自身であり、空は今の世の中や社会であり、海は家族係累や恋人であると私は解釈している。空の青、海の青に溶け込み、人並みに幸せを感じていた時期が確かに私にはあった。会社のイメージが壊れ、会社から自分の築き上げてきた価値観を全面否定されるにいたったとき、「白鳥は」の歌が強烈なイメージを持って私に迫ってきた。空の青、海の青に馴染めず、ただ一人虚空を漂う白鳥を、どうしても私は自分自身に投影させてしまったのである。やはり、牧水と同じように私は今も、「かなしからずや」と問いかけているのが正直な自分の気持であり、不覚にも本音でもある。
今月11月で女房が停年退職する。二人で「自分さがし」の旅にでることはできないだろうか。そのことを今、自分に問いかけている。
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