今日も市の公園の同僚たちはゴルフ談議で盛り上がっていた

 ゴルフというスポーツは、一度その楽しみを味わったら、なかなか抜け出せないものらしい。
 私は現在、月に60時間から70時間、市の公園で働いている。仕事は公園全体の管理事務とバーベキュー場サイトの貸出業務である。
 メンバーは私を含めた男性10名と女性4名である。その男性の中で、5名がゴルフを趣味にしている。休憩中の雑談の多くはゴルフの話である。
 それだけ、ゴルフが誰でも手軽に楽しむことができるスポーツになった証拠でもある。
 またその5人は市のシルバー人材センターのゴルフ同好会のメンバーでもあるが、さすがにコロナ禍で、去年からゴルフコンペは自粛しているようである。だが、集まるといつもテレビのゴルフ番組の話題で盛り上がっている。
 私はその話に付いて行けず、ちょっとばかり食傷気味になっている。
 私が28年間も営業担当をしてきた。社長から「自分のクラブセットを譲ってやるから、ゴルフをやれ」と命ぜられても、いっさい手を出さなかった。
 それにはある事情があった。
 私は45年前に労働組合の委員長から手助けしてほしいと頼まれて、書記長になった。
 書記長となった2年目のことだが、大事な春闘の時期に私が所属する組合の上部団体幹部が愛知県の渥美半島で、会社の経営者側と和気あいあいでゴルフを楽しんでいたという情報が私の耳に入ってきた。
 親会社の労働組合である上部団体とその協力会社の組合幹部との打ち合わせの席で、私は「恥ずかしくないか」と当事者たる上部団体幹部に向かい、暴言を吐いてしまった。私はその勢いのまま、その場で生涯ゴルフはやらないと公言してしまった。
 そう公言してしまったこともあり、私は会社から営業担当を任されてからも一切ゴルフをやらなかった。今でもゴルフというスポーツに偏見を持っている。
 市の公園で一緒に働く5名の男性メンバーは、現役サラリーマン時代に味わった楽しみはなかなか捨て切れないようで、中には練習場も含めたゴルフ代を確保するために働いていると公言する人もいる。
 どこかの本で読んだことがあるが、終戦まで芋畑や飛行場への転用を逃れたゴルフ場に、腕自慢のアマチュアゴルファーたちは、近所の人たちに「非国民」と言われながらも、唐草模様の風呂敷にゴルフ道具を忍ばせて、こっそり通い続けたということである。
 ゴルフに対する快楽度合いの深さは、ゴルフ経験のない私の想像をはるかに超えている。
 私は営業担当を任命されるまで、ゴルフに関する知識がまるでなかった。
 45年前、仕事を受注するために毎日通っていた得意先では、必ず、ゴルフに関することが話題の俎上に上がる。そんなときは一刻も早く、その話題が通り過ぎていくのをじっと願っていた。
 あるとき、得意先の外注担当者が同僚の人に向かって、「シングルの人と回るんだからサ、少し、ハンディキャップをくれよ」と言っているのを聞いたとき、恥ずかしいことだが、私は何のことだか、さっぱり分らなかった。
 私はこれではまずいと思い、ゴルフをやる、やらないは別にして、営業活動を円滑にするために、せめてゴルフ用語だけでも覚えようと思った。
 ところが、気乗りもせず、実践を伴わない言葉は、そう簡単に覚えられるものではない。実際にゴルフをやったことがないので、どうしても感覚的にズレが生じてくる。
 私はあるとき、そのことに気付いた。
 得意先の前で知ったかぶりをするのを諦めて、私は聞き役に徹することにしたが、やはりゴルフの腕自慢を聞いているのは、私には苦痛以外、何物でもなかった。
 皮肉にも、今日も市の公園の同僚たちはゴルフ談議で盛り上がっていた。

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