朗読は 一つの独立したジャンルなのだ

 私のブログによくコメントをいただくmonbanさんは「朗読グループおおぶ紙ふうせん」のメンバーで、その発表会にはこれまで3度、出掛けていったことがある。
 朗読は話芸の一つだと思っていたからである。
 残念ながら、2020年はコロナ禍で「朗読グループおおぶ紙ふうせん」の発表会は開催されなかった。
 最近、阿刀田高氏の「私が作家になった理由」を読み終えたが、阿刀田氏はその「朗読」の中で、その朗読について書き込んだ個所がある。我が意を得たりと思ったので、紹介してみる。
 <少しずつわかったことだが朗読はそれ自体一つのジャンルなのだ。演劇とも異なるし一人で読む読書とも明らかにちがう。
 演劇では役者は基本的に自分の役に専念する。朗読者はすべての登場人物に適応しなければならないし、精鋭を広く読み込まなければならない。滑舌をよくし明晰に読むことがよく言われるが、それ以上に内容をよく理解し、それを音声で伝えることが大切だ。同じ表現でも本気なのか、ジョークなのか、まちがったら話にならない。この意味でも朗読者は演出を兼ねている。(中略)
 私は長いあいだ朗読をそばで見聞きして、これはほかとはちがう技芸であり、繰り返して言うが、
 ― 一つの独立したジャンルなのだ ―>

 私は23歳のとき、中学高校の友だちの兄が経営する自動車部品製造会社に就職した。
 1年間の現場経験のあと、小牧市に本社を持つ防振ゴムの会社の営業担当を命ぜられ、2トントラックで製品を納品しがてら、営業活動を行っていた。
 その得意先は埼玉県上尾市にも工場を持っており、営業活動をやり出してから1年後に日産自動車用の製品をその工場に運搬することになった。月に2度、運転手とともに3.5トンのトラックに乗り、納品に出かけていた。
 夜中の12時時に出発して、埼玉県上尾市に到着するのは午前7時であった。
 その間、気持を和ませるものと言えば、ラジオだけであった。
 上尾市までの道中、ラジオ番組の中でよく聞いたのが、NHKラジオ第1放送のラジオドラマ番組の『日曜名作座』であった。出演は俳優、森繁久彌氏と、女優の加藤道子さんであった。
 お二人は登場人物に合わせる形で声色を変え、話す間もそれぞれの役柄で使い分けて、登場人物を演じ分けていた。取り上げられた題材は、文芸作品が多かった気がする。
 今から50年も前のことである。私はその頃から、朗読は話芸の一つだと思っていた。

 私は5年後にその会社を退職した。
 自分が住んでいる大府市にある同じ自動車部品製造会社に再就職したが、2年後に社長から三菱重工の営業担当を任命され、再び同じように2トントラックを運転して、三菱重工の枇杷島工場に納品し、営業活動を行うようになった。
 だが、ラジオで朗読番組を聞くことはなくなった。専ら、テープで小沢昭一氏の「日本の放浪芸」か、もしくは落語全集を聞いていた。
 そして売上高が3倍になった頃から、納品は専用の運転手が行うようになり、私は普通車のバンで営業活動をするようになった。バンの中で聴くのは、やはりテープからCDに替わった落語全集であった。
 そして気まぐれに聴いたのが、NHKラジオ第2放送で放送されている15分の朗読番組である。
 この番組は初めに朗読者が「朗読の時間です」とコールする。そして芥川龍之介や中原中也など日本の近代から現代にかけての文芸作品を中心に俳優やアナウンサーらが朗読する。やはり、朗読番組は話芸の一つである。
 実を言うと、私は芥川龍之介の文芸読本は持っていても、その著作をこれまで文字で読んだことはない。すべてこの朗読番組で聴いただけである。
 それで芥川賞受賞作品を語るのは、本来、図々しことなのかも知れない。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

monban
2021年02月20日 13:31
issa様。私達のグループは6/17の発表会に向けて今練習を重ねているところです。
阿刀田さんの言葉、なるほど!良く分かります。頭で分かることが出来るようになるように...山の高みは見上げれば遥か雲の上。私などは麓に近い辺りから道に迷いながら登り続けているところです。足下ばかりに気を取られてしまいがちですが、見える景色の良さを楽しみながらこれからも頑張ります。
issa
2021年02月20日 19:50
monbanさん。6月17日には必ず聴きに行きます。朗読は誇れる技芸だと思いますので、これからも磨きをかけて、階段を一つずつ昇っていってください。
monban
2021年03月12日 00:03
issa様。コロナ禍での諸事情によって、6月に予定していた朗読発表会は延期になる可能性が高くなりました。
issa
2021年03月12日 09:26
monbanさん、本当に残念ですね。
余談になりますが、先だって、舟木淳先生が出演する5月23日開演の「朗読・邦楽・語りの競演」のチケットを購入しました。楽しみにしています。
monban
2021年03月12日 19:38
issa様。発表会は秋に開催することを目指す予定です。また決まりましたらご報告致します。
5月の先生の朗読のイベントには私も含め、朗読グループからも沢山観に行く人がいると思います。
issa
2021年03月12日 20:55
monbanさん、日程が決まりましたら、連絡してください。