今はテーブルマナーなどすっかり忘れてしまっている

 今の私は酒も煙草もやらないし、グルメ嗜好もない。
 だが、35歳のとき、三菱重工の営業担当を任命されてからは、いつ何時、三菱重工の重役や海外企業の客先と食事に行くかも知れないと思い、一応テーブルマナーについての本を読んだことがある。実際にナイフとフォークの使い方も何度も練習した。
 その練習の成果が出たのか、営業担当時代にはテーブルマナーで大きな失敗をしたことはない。
 会社をRetireしたあと、そのターブルマナーに関する文章を以前、このブログに書いたことがある。紹介してみる。

 2006年の9月に完成した名古屋市駅前のミッドランドスクエア42階のスカイレストランに、現役時代に世話になった女性とフランス料理のランチを食べに行ったことがある。
 そのランチコースの魚料理のとき、レモンの薄切りをソティしたものが一枚、無造作に魚の切り身の上に置かれてあった。私たちの真正面で、腰を屈めながら、料理の説明している女性に、私はレモンの薄切りをソティしたものを指差し、「これ、単独で食べてもシェフに失礼にあたりませんよね」と尋ねると、「お客様のお好きなように、お食べ下さい。」と応対してくれた。
 私は、即座にそのレモンの薄切りをソティしたものを親指と薬指に摘み、口の中に入れた。
 するとManagerらしき人が、急ぎ足で私の側にやってきて、「これはまた、ワイルドな食べ方をなさいますね」と笑いながら、語りかけてくる。
 「マナー違反ですよね。」と私が釈明すると、Managerが、「テーブルマナーなんて、食事をするときには、気にしない方がいいんですよ。他のお客様にご迷惑を掛けなければ、お好きなような食べ方でいいんです」と私をフォローしてくれる。
 私は、レモンの薄切りをオリーブオイルでソティしたものが、単独で、どんな味のするものなのか、確認したかっただけである。他に他意はない。店の中が和んだ空気に包まれた。

 ルネ・クレマン監督のフランス映画「太陽がいっぱい」の中で、貧民層出身の主人公のアラン・ドロンが、上流社会の人と食事をした後、大富豪の息子に、「お前、貧しい家庭に育ったな」と生い立ちを見破られる。主人公のアラン・ドロンが「何故?」と聞くと、大富豪の息子は、「テーブルマナーを寸分たがわず、こなしたからだ。本当の上流社会の人間は、実はテーブルマナーなど気にせず、自分流の食べ方をするものだ。人の目を気にして、テーブルマナーを間違いなく、そつなくこなすことが、貧しい家庭に育った証拠なんだ」と蔑みの目で、主人公に言い放つシーンがある。
 それから私は、ゲップやスープを啜るときの音、ナイフやフォークを食器に当てる音など、他人の迷惑にならなければ、自分流の食べ方でいいと自分勝手に解釈してしまった。
 「太陽がいっぱい」のシーンがあったからこそ、38年間の私のサラリーマン時代、三菱重工の重役や海外企業の客先とも、何の気後れもなく食事が共にでき、商談も臆することなくできた。
 そうした自分流のテーブルマナーをそれほど気にしなくてもいいことを、図らずもミッドランドスクエアのフランス料理店で実証できた。

 そして花フェスタ記念公園の帰りには、よく昼食のために寄ったフランス料理店に行ったときにも、テーブルマナーについてオーナーシェフに尋ねたことがある。
 「魚料理には白ワイン、肉料理には赤ワインといいますが、本当ですか」と尋ねると、「一般的にはそう言われていますが、実はどちらでも構わないんですよ。また、アルザスワインには白ワインしかありませんから、うちで赤ワインと言われても、ちょっと困ってしまいます」と言われ、私は何故か、ほっとした覚えがある。私は白ワインの方が好きだからだ。
 ついでにと言ったら、オーナーシェフに叱られるかも知れないが、「ナイフとフォークは外側に置かれたものから使っていくんですよね。イギリスでは内側からだと聞いているんですが、・・・」と尋ねると、「イギリスもやはり、外側からだと思いますよ」という答えが即座に返ってきた。
 私はまた、「魚料理のときのナイフと肉料理のナイフと違うんですか」と言うと、「それも区別がないと思います」とのことである。何かにつけ、私の中には余分な情報が多過ぎたことに改めて気付かされた。

 だが、会社をRetireして14年にもなると、テーブルマナーなどすっかり忘れてしまっている。
 それより何より、これから先、グルメ嗜好が消え失せた私が結婚式でもない限り、フランス料理を食べる機会はまったくないと思われる。

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