奥さんと子どもを捨てて、わたしと結婚してくれる?

 男はここのところ、ずっと微熱があって体全体がだるい。
 これまで5年間、一度もスキップすることなく続けてきたブログの更新を昨日は怠ってしまい、何か、自分の中で気が張っていたものが、ガタガタと一挙に崩れ落ちていく気分になっていた。
 昨夜、はっきりしない夢の中に、久し振りに10年も付き合ってきて、深い関係を持たずに別れた女が登場してきた。女は男より一回り年下で、今年40歳になる。
 男のだらだらと続く眠りの浅い夢の中で、女は男に向かって、怒りを露わにしている。
 <わたしと付き合いだして10年、自分のペースでしか行動をしないあなたが、なんで、そんなに落ち込んでいるのよ?いつも自分の言いたいことだけ言って、わたしの話なんか、いつも上の空で中途半端にしか聞かずに、これまでずっと、わたしを怒らせてきたのに!どうしたのよ、その情けない姿は。もっと元気を出してよ>
 男は朦朧とした意識の中で、答える。
 <この前、きみは母親の葬式のあとに電話をくれたけど、おれとの付き合いを、もう【これまで】にしたいような口ぶりだったから、あれから、ずっと考えていたんだよ。おれたちの仲を。これでいいのかどうかを>
 女が答える。
 <まだ、あなたはわたしの性格が分っていないのね。母親が亡くなり、通夜と告別式の段取りを自分一人でやったのよ。やっと役目を終え、疲れと悲しみで魂が抜けたような状態になって、急に寂しくなって、あなたに電話したのよ。わたしたちの仲をもう【これまで】にしたいと思っていたら、電話なんかする訳ないでしょ>
 男は必死で訴える。
 <歳の差があり過ぎて、おれたちの仲の終着点が見えてこないんだよ。きみには別れの日がいつ来てもいいように、常に覚悟を決めているからなんて、大きな口を叩いているけど、白状するよ、やはり、おれは一日でも一時間でも長く、きみと一緒にいたいんだよ、おれは>
 夢の中の女は、いつになく、きっと目を見開いて、男に向かって叫んでいる。
 <歳のことは言わないで。前にも言ったでしょ。互いに必要な人間なのは確かなのだから、これまで通り、一緒にいればいいじゃないの>
 「ごめん、自分にまだ正直になっていないんだ、おれ」と、男は叫び返している。
 <これまでのように、もう一緒にいるだけじゃ、自分の気持を抑え切れなくなっている。逢っていると、男と女の関係になりたいという衝動に負けそうになる。これまで通りの付き合いならば、もう【これまで】にして、2人の仲に区切りをつけたいと思っているのは、実はおれの方かも知れないんだ>
 女の声が、急に涙声になる。
 <じゃあ、奥さんと子どもを捨てて、わたしと結婚してくれる。わたしはいつでもOKよ。あなたにはそんな覚悟はないでしょ。ずるいのよ、あなたは>
 男の気持が急にトーンダウンする。
 <わたしは、結婚してくれるのなら、男と女の関係になってもいいと思ってるのよ、優柔不断なのはあなたの方じゃない>
 ど真ん中に直球を投げられて、男の気持は途端に萎えてくる。
 男は、自分の家庭と女を天秤にかけている自分に気づき、茫然として、心が行き場を失っている。
 これは夢か、現か、幻しか、急に胸が苦しくなってきて、男は夜中に目を覚ます。
 時間を確認しようと、手探りで枕元のケイタイを探して、おもむろに画面を覗いてみる。 
 メールの受信マークが画面の隅の方に付いている。
 女からだった。
 『今度の金曜日に会えますか』
 男はベッドを降り、洗面所で顔を洗った。改めて受信メールを文面を確認しながら、【いつものところ、いつもの時間に迎えに行きます】と自分のずるさなど、一向に気にしない様子で、返信メールを打っていた。 

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