今や「赤色エレジー」に抱いた妙な感覚は、今や確実に幻想になっている

 8月30日のバーベキュー場の勤務で、久し振りにカラオケ同好会の会長をやっている人と一緒であった。
 最近、私がYouTubeで、あがた森魚の「赤色エレジー」をよく聴くようになったと話すと、「そんな歌、聴いたことないよ」と首を傾げる。
画像 この歌は1972年4月に発売されている。
 その人は私より2歳年上なので、いわば同年代であり、同じ歌謡曲好きでもあるので、間違いなくこの歌を聴いているはずである。私の記憶には、その歌が強烈に残っているのに、まったく記憶にないというのは、私が変わっているのであろうか。
 この歌を最近、よく聴くようになったのには、きっかけがある。
 と言うのは、ネットで、たまたま音楽プロデューサーの佐藤剛氏のブログで【変な歌や訳がわからない歌の代表格、あがた森魚の「赤色エレジー」】という記事を読んだからである。
 その記事の冒頭に次のような文章があった。
 <どういうわけか”変な歌”や訳がわからない歌が、突如として流行するということが、昭和の時代にはしばしば起こった。
 訳が分からないのに忘れられない、妙に印象に残ってしまう歌の代表格が、あがた森魚の「赤色エレジー」である。>
 つまり、佐藤剛氏と同じように、私には「赤色エレジー」は【妙に印象に残ってしまう歌】だったが、カラオケ同好会の会長には、妙で変な歌としても、記憶には残っていないようだ。
 私は2009年、このブログに「赤色エレジー」を引き合いに出しながら、「同棲」について、次のように書き込んだことがある。
 <当時、「同棲」というシチュエーションのもと、男女の愛をテーマとして書かれたり、もしくは歌われたりしたもので、最初に話題になったのは確か「赤色エレジー」だったように思われる。
 その次に話題になったのが1972年の上村一夫の「同棲時代」であり、それから、南こうせつと喜多条忠が19573年に作り上げた世界「神田川」ではなかっただろうか。
 1940年生まれの上村一夫を除けば、全て団塊の世代の人たちによって作られた。
 その中でも、あがた森魚の「赤色エレジー」は、強烈に私の心の中に残っている。
 「赤色エレジー」は、月刊漫画ガロ(青林堂)に1970年1月号から1971年1月号まで連載された林静一氏の漫画である。その漫画に心打たれたあがた森魚が同名の歌を出し、ヒットすることで漫画も増刷され、さらに「赤色エレジー」は有名になっていった。
 漫画の内容は、漫画家を志すアニメーターの一郎とセル画をトレースする幸子との愛の物語である。 
 四畳半で暮らす先の見えない2人の危うい関係が、切なくも悲しく描かれる。
 私自体は、まず「赤色エレジー」というタイトルが気になっていた。私も赤色に特別な思い入れがあったからである。
 「赤とんぼ」という言葉にも、夕日の赤にも、初恋の人との思い出の中で、大きな位置を占めていた。「赤色エレジー」を聞くたび、漫画の原作者と同じように、赤色に拘っている自分に気付き、はっとしたりしていた。
 私は大ヒットから3年後に、映画版『赤色エレジー』を名古屋の映画館で観たことがある。
 映画のタイトルもストーリーは全く記憶から消えているが、映画のラストシーンで、あがた森魚が切なく歌う「赤色エレジー」と、沈みゆく夕日の赤が私の心に今も残っている。
 それは、大正レトロと呼ばれた曲想に因ることが大きい。まるで、ズンタを思わせるメロディーは大正時代の演歌師のようであり、歌う唄は正に悲歌(エレジー)と呼ぶのにふさわしかった。
 「赤色エレジー」の時代、「同棲」は貧しさゆえであり、背景に世間に対する後ろめたさを秘めていた。
 恋人たちにとって、いつ貧しさから抜け出し、幸せを掴めるのか、まったく保証されない時代でもあった。だからこそ、同棲している若者は「赤色エレジー」の主人公の生き方の上に自分たちの身の上を投影させ、共感を寄せたのである。
 その後、「神田川」の時代になると、男は夢を追うイラストレーターや作家の卵だったりし、女性だけ働いているというケースが多く、概ね女性が、幾分恵まれない境遇というパターンが多かった。
 それは「若かったあの頃、何も恐くなかった。ただ、あなたの優しさが恐かった」という歌詞に象徴されるように、「今の幸せは長続きしない」という予感を抱きつつ、今を精一杯生きようとする女性が多かった時代とも言える。
 イラストレーターや作家の卵は成功すれば、自然と女性との同棲を解消し出ていくことが多かった。もし夢破れて普通のサラリーマンとなったとしても、同棲時代とは価値観にズレが生じてしまい、やがて2人の仲は終焉を迎えることになる。私の大学時代には、そんなケースが多かったようにも思われる。
 それは日本が高度成長期に入り、その気にさえなれば、一人ひとりが暮らしていける社会情勢が、「同棲」というものを異質なものへと変貌させてしまった背景ではなかろうか。
 今は貧しさゆえの「同棲」はほとんどないし、「同棲」することに後ろめたさを感じる人も皆無と言っていい。もはや、同棲時代という言葉は死語になったのかも知れない。>
 カラオケ同好会の会長は、YouTubeでぜひ「赤色エレジー」を聴いてみると言ったが、はたしてこの歌を思い出すのであろうか。
 あれから45年、今や「赤色エレジー」に抱いた妙な感覚は、今では確実に幻想になっている。

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