男が不倫をするには経済力と健康が必要である

 新しくできた公園のバーベキュー広場の就業に関するシルバー人材センター説明会が、3月8日に開かれた。
 その説明会で、市営駐車場の管理人をしていたときの仲間のNさんと、約4年ぶりに顔を合わせ、旧交を温めた。
 説明会が終了し、歩いて帰る途中、私は老舗のカフェ店の入り口付近で、ウロウロしている50代の男性がいるのが目に入り、その挙動が気になって仕方がなく、100メートルほど前から、その男性の方から目を離さずにいた。その男性はダークブラウンのスーツをビシッと決めて、遠くからでも目立つ派手な色のネクタイをしている。一見、ダンディな出で立ちである。
 すると、自転車に乗ったNさんが私の真横に来て、「何度も自転車のベルを鳴らしたのに気付かなかった?」と声を掛けてきた。
 私はごめん、ごめんと言いながら、カフェ店の入り口でウロウロしている男性の方を顎で示して、あの人が挙動不審なので気になって、ベルに気付かなかったと弁解する。当然、Nさんは「何で?」と訊いてきた。
 私はおそらくあの人は女性を待っていて、もうすぐ女性が現われるはずだよと、Nさんの興味をそそる言い方をした。悪趣味だと分かっていても、さっきからずっとあの人を眺めているんだと説明する。
 案の定、カフェ店横の駐車場に赤い大衆車が停まり、40代の女性が降りてきた。その男性を見つけると、小走りで駆け寄っていく。男性が二言三言、声を掛けると、女性は含み笑いをしながら、男の腕を取って、カフェ店のドアを手前に引いて、中へ入っていく。
 よせばいいのに、私はNさんに向かって、「あの2人、たぶん不倫だよ」と声を掛ける。あの女性の素振りから見ても、単なるランチデートだけの関係には見えなかったからだ。
 Nさんは「今の自分は、現役を引退して金もないから、家で発泡酒を飲んで、外にはまったく飲みに行かなくなったので、オレにはもう、あんな元気はないよ」としみじみした口調で語る。
 確かに、私のこれまでの経験からしても、サラリーマンなら、それなりの役職に就いて小遣いに余裕がなければ、車で女性と一緒に遠出する費用も賄えず、スナックで飲むこともままならない。
 つまり、どこか大企業の顧問でもやっていれば別だが、会社をRetireした一般的な男には、どう転んでも不倫なんて、金のかかることなどできない。
 それと仕事に生きがいを持っている男にとっては、不倫などは生きてるついでのほんの気分転換で、少し寄り道した程度のことのように思えてくる。
 男というものは、仕事で成功した思い出はずっと引きずるが、不倫の思い出はいつの間にか、雲散霧消してしまうものではなかろうか。カフェ店に入った男性の素振りがそんなことを連想させる。
 まして、私のように周囲に気を遣って、せいぜいランチデートに毛が生えた程度の付き合い方しかできない男には、思い出と言っても、それは視覚と聴覚によるものをベースにしており、痕跡としてほとんど残らず、時間とともに自然消滅していく。
 もし、肉体関係があれば、触覚、嗅覚、味覚も加わるだろうから、その思い出はさらに鮮明になると思われるが、それとて、男はその思い出が築かれた時代にまで戻りたいとは、決して思うことはない。
 だが、これに反して、サラリーマン時代の成功体験は、ちょっとやそこらでは抹消できるものではない。どこまでも心の中でのたうちまわり、成仏するまで時間がかかる。
 私にしても、サラリーマンとして、とても成功体験をしたとは言えないにしても、勧誘してくれる会社で再び生きがいのある事ができたのではないかという悔いが、いつまでも心にこびりついていた。情けないが、自分に引導を渡すのに10年近くかかってしまった。
 いずれにしても、男が不倫をするには経済力と健康がなければ、成立しないようだである。

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