若かった自分の軌跡がそこにある

 先だって、中学3年の時の担任が私たちの卒業後にクラス誌を作ってくれたという話をこのブログで紹介した。
 そのクラス誌は、担任から指名された卒業生たちが原稿を書き、担任自らが校正をして蝋をひいた原紙をヤスリ盤に乗せ、鉄筆で一つひとつ文字やカットを刻んでから、印刷製本したものである。それをするには多くの労力を掛けなければ出来上がらない。並外れた卒業生への愛情がなければ、なかなかできるものではない。
 従って、これは私の勝手な想像だが、担任がやがて教頭となり校長になってしまうと、そうしたクラス誌を作る時間が取れなくなり、第3号まで終わってしまったと思われる。世間でよく言われる原稿が集まらずに終わってしまう3号雑誌とは、少し意味合いが違うように思われる。
 そうした担任の情熱を慮り、クラス誌の復刊を企画した友だちから、手元に第3号しかないので、もし第1号と2号を持っている同級生は連絡がほしいと彼のブログに載っていたので、ずっと気になっていた。
 たまたま、中学・高校時代に使っていた本箱を探したら、そのクラス誌の第1号が出てきたので、先日、彼に手渡した。そのときにその本箱から、思いも寄らぬノートが見つかった。
 大学時代のカリキュラムに必須ではなかったが、「英語の歴史」と授業があり、私は興味があって前後期に亘って、その授業を受けたときのノートである。
 現代英語に至るまでの流れは実に複雑である。
 アングロ・サクソン語が主流となっても、ケルト語、ギリシャ語、ラテン語の影響を受けて、英語は徐々に変化していく。
 その中でも1066年にイギリスはフランスに征服されたことで、さらに英語は変化していく。従って、1066年を「ノルマン大征服(Norman Conquest)」と呼んで、現代英語の転換期となる。
 何が転換期かと言えば、フランスからのノルマン王家が誕生すると、イギリスの宮廷ではフランス語が公用語となり、上流階級の言葉はフランス語、一般人はアングロ・サクソン語を使うようになったからである。
 こうした状況はどんな現象を引き起こしたかと言えば、英語には同じ意味を持つ言葉が複数存在することになったのである。
 ノートから拾い読みをしてみる。前者がアングロ・サクソン語で、後者がフランス語から派生した言葉である。
 まず始まるという意味の言葉はBegin とCommence、逆に終わるという意味のEnd とFinish、さらに尋ねるではAsk とQuestion、中心ではMiddleとCenter、助けるという意味ではHelp とAid、子供はChildとInfant、形ではShape とFigure、時代はTimeと Ageなど、その他にも幾つかの単語が書いてある。
 ただ、小さいという意味のSmallとLittle、逆に大きいという意味のBigとLargeはクエッションマークが付いている。明らかにSmall とBig はアングロ・サクソン語だが、LittleとLargeはフランス語からの借用語ではないのかも知れない。
 さらに病気という意味のIllとSickの語源は、アングロ・サクソン語とフランス語という範疇では区分けはできないというコメントが書かれている。
 さらにノートの次のページには下記のようなことが書き込まれている。
   豚: Pig、Swine ⇒ 豚肉: Pork
   牛: Cow、Ox ⇒ 牛肉: Beef
   鹿: Deer ⇒ 鹿肉: Venison
   羊: Sheep ⇒ 羊肉: Mutton
 これは1066年のノルマン人の来襲によって、フランス語が公用語となり、牛や豚を飼育するのは征服された側のアングロ・サクソン人、だから生きている間の動物の名称には彼らの言葉が使われて、一方、肉になってからこれを食べるのは征服者であるノルマン人の言葉と区別されたことにより、肉はフランス語系の言葉として、現代まで連なっている。
 さらにノートには、土着の英語から現代英語に至る魚の骨のような枝葉の多い図が書かれている。
 若かった自分の軌跡がそこにある。大学時代に思いを寄せた人が頭の中を通り過ぎていく。

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