人間関係の繋がりを解くミステリー作品のようだ
今日、絲山秋子さんの『ダーティ・ワーク』を読み終えた。
この小説は「worried about you」、「sympathy for the devil」、「moonlight mile」、「before they make me run」、「miss you」、「back to zero」「beast of burden 」の7つの短編から構成される連作である。
絲山さんの作品にはデビュー作品である『イッツ・オンリー・トーク』をはじめ、『ニート』『エスケイプ/アブセント』、、そして未読の作品だが『ラジ&ピース』『スモールトーク』などカタカナのタイトルが意外と多い。
この小説に収められている各篇のタイトルはすべてローリング・ストーンズの曲名から採られていて、そして、メイン・タイトルの『ダーティ・ワーク』は同じくローリング・ストーンズのアルバム名から採られているとのことである。絲山さんが音楽好きで車好きで、ファッションにも関心を持っていることは、絲山作品を重ねて読んでいくとマニアックと思われるほどカタカナ言葉として小説の中に登場してくるので、嫌でもそれと分かる。
この小説が7つの短編の連作だというのは、3編ぐらいを読んだところで初めて読者は「あれ!」と気付かされる。
7つの短編は「俺」と「わたし」と「私」という一人称で語られていて、それぞれが一見独立したストーリー展開のような様相を見せているが、さらに読み進んでいくと複雑に入り組んだ人間関係の相関図が浮かび上がってくる。読者は読み進めている短編の中のエピソードが、前の短編のエピソードと思わぬ形で繋がったり、すんなり読み過ごしてきた中に意外な事実があって、初めて明らかにされたりして、7篇の登場人物が微妙に絡み合っている。
だから、読者は読み進めながらもまた第一話から三話に戻って確認する作業が必要となり、その作業は一種のミステリー小説を読み解く面白さにも繋がっている。
だが、ミステリー小説と異なる点は、描かれているエピソードは通常の社会の中で、そこいらに転がっているような出来事で、荒唐無稽の話はいっさい出てこない。
絲山さんはストーリーテラーとしても一流だということが、この作品で私にはよく分かった。そのストーリー・テリングの巧みさは次のような箇所でも窺い知ることができる。
第一話の「worried about you」では「私」が熊井望(女性)というギタリストで、全体の中心人物に設定されていると思われる。
その「私」は音楽にのめり込むほどの情熱は持っていないが、職業としてギタリストを選んでいる。高校時代のバンド仲間の「TT」には今でも恋愛感情を持っているが、今では執着心も薄れて時間の流れに身を置いている。そして、しばらくの間、「TT」の話題はあとの小説の中に登場してこない。
読者は提供された短編を読み進んでいき、最終章近くで主人公が通う花屋の主人として「辻森」という中年男性のの花屋が登場してくるが、その「辻森」とそれ以前の短編で「俺」として登場してくる「遠井」との親交が明らかになる。そして、その「遠井」なる人物が、第一話の「TT」と同一人物であることがはじめてはっきりと明示される。
そうした繋がりが少しずつ明確になっていき、第七話でふたたび「熊井」という主人公の視点に戻り、やっと「TT」と再会を果たした彼女は、ふたりのこれからの行く末について一人称で語り始めるところで小説は完了する。
絲山さんという作家の特徴とも言えることなのだが、ジメジメ、ドロドロとした表現はいっさいせずにストーリーを進めていく。心理描写にしても会話にしても最小限の言葉を使って、サラリと表現する。感性や共感に訴える表現は極力押し殺しているとさえ思えてくる。
私はこのブログで吉田修一氏の『日曜日たち』を見事な短編の連作だと書き込んだことがあるが、この『ダーティ・ワーク』も負けず劣らず、素晴らしい短編連作だと思っている。
いずれにしても、『沖で待つ』とは別の面白さがあった。
この小説は「worried about you」、「sympathy for the devil」、「moonlight mile」、「before they make me run」、「miss you」、「back to zero」「beast of burden 」の7つの短編から構成される連作である。絲山さんの作品にはデビュー作品である『イッツ・オンリー・トーク』をはじめ、『ニート』『エスケイプ/アブセント』、、そして未読の作品だが『ラジ&ピース』『スモールトーク』などカタカナのタイトルが意外と多い。
この小説に収められている各篇のタイトルはすべてローリング・ストーンズの曲名から採られていて、そして、メイン・タイトルの『ダーティ・ワーク』は同じくローリング・ストーンズのアルバム名から採られているとのことである。絲山さんが音楽好きで車好きで、ファッションにも関心を持っていることは、絲山作品を重ねて読んでいくとマニアックと思われるほどカタカナ言葉として小説の中に登場してくるので、嫌でもそれと分かる。
この小説が7つの短編の連作だというのは、3編ぐらいを読んだところで初めて読者は「あれ!」と気付かされる。
7つの短編は「俺」と「わたし」と「私」という一人称で語られていて、それぞれが一見独立したストーリー展開のような様相を見せているが、さらに読み進んでいくと複雑に入り組んだ人間関係の相関図が浮かび上がってくる。読者は読み進めている短編の中のエピソードが、前の短編のエピソードと思わぬ形で繋がったり、すんなり読み過ごしてきた中に意外な事実があって、初めて明らかにされたりして、7篇の登場人物が微妙に絡み合っている。
だから、読者は読み進めながらもまた第一話から三話に戻って確認する作業が必要となり、その作業は一種のミステリー小説を読み解く面白さにも繋がっている。
だが、ミステリー小説と異なる点は、描かれているエピソードは通常の社会の中で、そこいらに転がっているような出来事で、荒唐無稽の話はいっさい出てこない。
絲山さんはストーリーテラーとしても一流だということが、この作品で私にはよく分かった。そのストーリー・テリングの巧みさは次のような箇所でも窺い知ることができる。
第一話の「worried about you」では「私」が熊井望(女性)というギタリストで、全体の中心人物に設定されていると思われる。
その「私」は音楽にのめり込むほどの情熱は持っていないが、職業としてギタリストを選んでいる。高校時代のバンド仲間の「TT」には今でも恋愛感情を持っているが、今では執着心も薄れて時間の流れに身を置いている。そして、しばらくの間、「TT」の話題はあとの小説の中に登場してこない。
読者は提供された短編を読み進んでいき、最終章近くで主人公が通う花屋の主人として「辻森」という中年男性のの花屋が登場してくるが、その「辻森」とそれ以前の短編で「俺」として登場してくる「遠井」との親交が明らかになる。そして、その「遠井」なる人物が、第一話の「TT」と同一人物であることがはじめてはっきりと明示される。
そうした繋がりが少しずつ明確になっていき、第七話でふたたび「熊井」という主人公の視点に戻り、やっと「TT」と再会を果たした彼女は、ふたりのこれからの行く末について一人称で語り始めるところで小説は完了する。
絲山さんという作家の特徴とも言えることなのだが、ジメジメ、ドロドロとした表現はいっさいせずにストーリーを進めていく。心理描写にしても会話にしても最小限の言葉を使って、サラリと表現する。感性や共感に訴える表現は極力押し殺しているとさえ思えてくる。
私はこのブログで吉田修一氏の『日曜日たち』を見事な短編の連作だと書き込んだことがあるが、この『ダーティ・ワーク』も負けず劣らず、素晴らしい短編連作だと思っている。
いずれにしても、『沖で待つ』とは別の面白さがあった。
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