今日もまた、昨日と大して変わらぬ一日が始まる

 今日のアルバイト先の勤務は3週間ぶりに1時間半の早出の日であった。
 わざわざ1時間半早出をするのは、作業マニュアルに沿って、機械設備の点検とメンテナンスをするためだ。
 従って、月に2、3度、私に当番が回ってくる早出の日には寝ぼけて二度寝することを恐れて、ケイタイのアラームを朝5時半に設定ししておく。そして、いつもより少し早目の12時ごろに就寝する。
 システム自体に不備があった場合には私たちでは手の施しようがなく、緊急用の電話でシステム会社に連絡を入れることになっている。従って、私たちが早出をするのは単にシステムが正常に稼動しているかどうかをチェックするためで、早出をするという割にはさほどの責任を課せられている訳ではない。
 なのに、前日の夜を迎えると私はソワソワし出して、落ち着かなくなる。そんなに気に掛けなくてもいいはずなのに、このソワソワ感は自分では如何ともしがたく、28年間のサラリーマン生活の中で営業担当を任されてきた習性が、自ずと疼き出してしまうのかも知れない。
 私が担当していた客先では、同業種の6社競合見積が原則であった。年間何億という商品見積を自ら作成して提出したあとに、6社の中でどこのメーカーに発注されるかどうか、客先の発注担当課から連絡が入る予定になっている前日は、なかなか寝付かれもせず、じっとしてもおれず、間断なくやってくるソワソワ感を抱いたまま、始業時間の何時間も前に出社したものだった。
 時折、自分でもバカバカしいと思いながらも、今も早出のときは、あのときのソワソワ感に似たものを感じてしまっている。28年間に身に付いた習性は簡単には洗い落とせないものだ。
 ケイタイのアラームに設定してあるメロディーはサザンの「いとしのエリー」で、今朝もまた几帳面に「いとしのエリー」のサビのメロディーが私を叩き起こした。カーテンを引いてみるとまだ世の中は闇の中、時折、本通りを走っていく大型トラックのエンジン音と振動音が聞こえてくるだけであった。
 先回10月1日の早出の日は、5時半にはもうすでに夜が明けていて、近くの公園の木々の向こうに朝靄が掛かっていたし、どこからか小鳥のさえずりも聞こえてきた。2階からは一定の間を置いて本通りをジャージ姿で散歩するお年寄りの姿もチラホラと見掛けることができた。
 あれから、3週間が経って、そのお年寄りの散歩時間も微妙に時間帯がズレてきている。だが、私には決められた時間があり、その時間のズレは許されていない。
 女房も当分の間、起きてきそうにない。私はトースターに6つ切りの食パンを2切れ入れ、フライパンにオリーブ・オイルを垂らして、スクランブル・エッグを作る。そして、ポットの湯の量と温度を確認をして、インスタント・コーヒーを入れる。今朝はそれだけではちょっと物足らない気がして、再びフライパンでベーコンを炒め、レタスをきざむ。
 食事が終わると郵便受けから朝刊を持ってきて、さっと目を通す。そして、洗面所に行き、歯磨きをして髭を剃る。
 さあ、出勤の準備完了。
 外から、うっすらとした明るさがカーテンの透き間をぬって部屋に忍び込んでくる。腕時計を見る。6時10分。女房に声を掛け、多少焦りながら家を出る。私はいつも通りの徒歩通勤だ。
 本通りに出る角のところに自然ゴミを集積場所があり、朝の早い時間なのに近所の女のお年寄り3人が世間話をしている。その前を通り過ぎるとき、ほとんど同じタイミングで「おはようございます」と声を掛け合って、足早にその場を立ち去る。今日もまた、昨日と大して変わらぬ一日が始まる。

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