今日が楽しければ、明日もきっと楽しいはず

 私は平成17年11月に38年間のサラリーマン生活に終止符を打って、人生の半分以上を過ごしてきたはずなのに余り多くを語らずに会社をRetireした。
 それまでの忙しさから解放されて、私は深く考えもせずに失業保険の受給を受けていた。1ヶ月から2ヶ月は毎日が日曜日と気楽に過ごしていたが、日が経つにつれて、果たしてこれが本当に自分が望んだ生活なんだろうかという思いに襲われることが多くなった。
 私はまるで何かに急かれるようにハローワークが提供する職業訓練の一つで、名古屋にある外国語学校が開講しているグローバルビジネス科で英語を学ぶことを決心した。
 大学を中退した私は、英語を中途半端にしか勉強できなかったことに悔やんでいて、もう一度、ビジネス英語に触れて自分を奮い立たせたかったからだ。
 そして、私はハローワークの人に頼んで、推薦状と入学願書を送付してもらった。しばらくして、ビジネス英語を学ぶにあたり、それにふさわしい一般教養を身に付けているかどうかをチェックする試験を5月に受けるようにという通知が我が家に届いた。
 高校入試程度の試験ではあったが、幸いにもその試験に合格して、私はめでたくI.C.NAGOYAのグローバルビジネス科に入学できた。
 6月8日の入校式に集まったのは、私も含めて24名で、その内訳は男性が2名、女性は22名であった。
 それから約3ヶ月、私たちは缶詰状態で、朝から夕方まで英語漬けで勉強させられた。特に最初の1ヶ月間はNative Speakerの先生が主力で、授業中にはなかなか日本語を話すことが許されず、パニック状態に陥ることもたびたびだった。そんなときには、クラスメートみんなでパニックになるのを互いにカバーしながら、実際に声を掛け合いながら協力し合ってきた。
 たった3ヶ月間ではあったが、これまでの学生生活では味わったことのないほどに緊張感があり、それ故に心の交流が拡がり、クラスメートとしての絆は深まった。
 そのグローバルビジネス科を卒業してから丸4年、そのときのクラスメートの一人であるYoshikoさんからメールが入った。内容は次のようである。
  <ご無沙汰しています。 Yoshikoです。
    グローバルで出会ってから、はや四年の月日がたちました。
   四年前の昨日はその入所式の日でしたが、その日を記念の日に選び、
   当時I.C.NAGOYA社員だった、Tくんと昨日入籍しました。
   二人で幸せになることを誓います。
   これからは夫婦共々よろしくお願いいたします。>
 その後、Yoshikoさんから私のケイタイに電話が入り、クラスメートのみんなに集まって結婚報告をしたいので、同じクラスメートのYukieさんと私に相談に乗ってほしいと言うのである。
 それぞれのスケジュール調整をして、昨日午後6時半、名古屋駅前のイタリアン・レストランで、新婚夫婦を含んだ4人で、日時、場所、クラスメートへの案内などについて打ち合わせした。
 2時間半、世間話をしながらも概ねの段取りは付いた。
 4人とも、約3年ぶりに顔を合わせたことになるが、思わず懐かしさが込上げてくる。
 だが、しばらくすると幸せそうな二人を眺めていたら、次第に自分が場違いなところにいるような錯覚に陥っていた。
 つまり、これからどんなに辛いときがあろうと、思いもかけぬ悲しいことが起きようと、結婚しようとする二人はきっちり明日を見据えている。そして言葉の端々に幸せになろうとする必死さが見える。
 それに引きかえ、今が平穏ならばそれが何より一番、私の頭にはそんな言葉しか浮かばない。私は、もはや生きることに感動をしなくなってしまったのだろうか。
 生きているだけの今日とさして変わりのない明日があると悟ることは寂しいことだ。だが、発想を変えて今日が楽しければ、明日もきっと楽しいはず、そう思えば、これからの自分の人生も満更でもないようにも思えてくる。ままよ、気にせずに生きてみるか。
 午後9時12分発のJRの電車の中で、そんなことを考えていた。
 大府駅の改札口を出ると、私と同年代の男が私に近づいてきて、「100円、めぐんでくれませんか?」と小声で囁いてくる。私は思わず知らず「甘ったれるな!」と声を荒げていた。
 何故か、言った途端、ふっと涙がこぼれてきた。

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