私は込み上げてくる苦笑いを押しつぶしながら、職場に急いだ

 今日6月4日は、午後1時から8時までの勤務だったが、私はこの勤務体系の日は少し早目の12時15分ごろに家を出るようにしている。
 というのは、いつも通勤は歩きだが、その途中で手入れされたよその家の庭に咲く花を眺めながら、ゆっくり歩いていくのが楽しみだからだ。画像
 この時期には、多くの花が庭に咲く。Retireしたご主人が手入れしていたり、しばらく行くと奥さんが庭の植木に盛んに水遣りをやっている姿を見つけたり、人声が聞こえると思ったら姑と嫁が仲よく協力して庭いじりをしている家庭もあったりして、庭一つでその家庭の植物に対する愛情が見え隠れして、じつに興味深い。
 特にこの6月は知らぬ間に季節の花が咲いたりしていて、驚かされることも多い。今日は何軒かの庭に早咲きのユリが咲いていた。どうも今年は少し季節が早く行き過ぎているようだ。例年であれば、もう梅雨入りの時期なのにその気配がまったく漂ってこない。たぶん、花の開花時期が早いのはそのせいなのであろう。
 大府駅前のロータリー近くで、1週間ほど前に新規オープンしたカレー店の数名の従業員が大通りを隔て、ハッピにたすき気を掛けて立っていて、行き交う人たちにチラシを配っている。
 私もカレーが決して嫌いではないので、従業員の差し出すチラシをもらって読んでみると、シンプルなビーフカレーが550円と記してあり、15種類ほどトッピングのメニューが書かれてあった。そのトッピングのクーポン券もチラシに添付されている。果たして、このカレーのメニューの価格が値打ちかどうかが私には判断できない。
 質実剛健で名を馳せる名古屋近郊でも大府市の住民の価格に対する感覚はするどい。かなりのお値打ち感がなければ、なかなか手を出さない。その証拠に大府駅前の東も西も喫茶店はあっても、レストランや食堂の類いの店は一軒もない。
 たぶん、その点に目を付けて、経営者はカレー店をオープンしたのであろうが、ここに来て従業員全員でチラシを配らなければならないほど客の入りが少なく、僅かな期間のうちに店の状況が深刻になってきたのであろう。
 チラシから目を上げると数メートル先からダークスーツに身を包んだ20代半ばの男性二人が勢いよくこちらに向かって来るのが見えた。おそらく、その身なりから二人は駅前にある銀行か、若しくは信用金庫の行員なのであろう。
 二人は何をはしゃいでいるのか、大きな声で話し合いながら、さらなる勢いで私の方に向かってくる。どうも私の歩いているのが目に入らない様子で、私は咄嗟にぶつかってはと思い、彼らに道を譲った。
 すると二人の会話の中に珍しい名古屋弁が入っていて、いきなり私の耳に飛び込んできた。
 「たわけたことを!」 一人の男性がもう一人の男性に向かって、叫ぶように話し掛けている。
 あまりに人目も気にしない大きな声のために聞くとはなしに聞くと、どうも一人が相手の男性に向かって、同じ職場の女性と付き合っているんじゃないかと尋ねたようで、その言葉に反応して尋ねられた男性が発した返事が、「たわけたことを!」という言葉だったのだ。
 名古屋地方では、関西の<アホ>、関東地方の<バカ>の代わりに<たわけ>という言葉を使う。<たわけ>は本来関西の「アホ」、関東の「バカ」とほぼ同義語だが、その場の雰囲気や話すトーンでややニュアンスが違ってくる。特に気のおけない間柄では、冗談っぽい言い方にもなるのだ。相当にネガティブな表現で言いたければ、この「たわけ」の前に「くそ」を付ける。
 なお、この「くそたわけ」は尾張地方でよく使われ、非常にという意味の接頭語「ど」を付けて、「どたわけ」と使うのは、あくまでも私見だが、三河地方に多いように思う。
 彼らはおそらく地元出身の行員に違いない。これもまた私見だが、世の中が不景気になると関東地方や関西地方の大学を出た若者が、地縁血縁のコネのきくこの地方にUターンしてくることが多くなるようだ。
 それより何より、天下の公道でそんな話をするとは何事か、もう少し同じ職場の女性に気を遣ったらどうか、ほんとうにデリカシーのない奴らだ。
 考えてみれば、恋愛問題ではいつも人からデリカシーがないと非難されてきた自分のことを脇に置いて、よくも二人をデリカシーがないと言えたものだ。私は込み上げてくる苦笑いを押しつぶしながら、職場に急いだ。
 
<参考>
 「たわけ」を語源辞書で調べてみると次のような説明が載っていた。
 【たわけ者の「たわけ」は、「田分け」と書き、子供の人数で田畑を分けると、孫の代、ひ孫の代へ受け継がれていくうちに、それぞれの持つ面積は狭くなり、少量の収穫しか入らず家系が衰退する。
そのような愚かなことを馬鹿にして、「たわけ者」と呼ぶようになったとする説が多い。
うしかし、「たわけ」という言葉は、「ばかげたことをする」「ふざける」などを意味する動詞「戯く(たわく)」の連用形が名詞となった言葉であるため、「田分け」の説は「戯け」と「田分け」を洒落た俗説である】

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

2010年06月05日 23:23
issaさん、誠です。
「お気に入り」に入れて何時も楽しく読んでいます。

私事で恐縮ですが、ブログを書いています。
はじめて4ヶ月程です。
メインテーマは、オーディオと音楽です。
時々自分の思いや感じた事を、書いています。
よろしかったら、訪ねてみて下さい。
オーディオと音楽大好き 諸々体験談

この記事へのトラックバック