「あおなみ線」乗車一日の旅

 私は2005年11月29日で、33年間働いてきた会社をRetireした。
 しかも定年延長の契約が次の年の3月末までであったのに、何か魔物にでもとり付かれたように私は急に思い立ってこんな中途半端な時期に辞めてしまった。
 定年延長なので、賃金カットはやむを得ないと納得できても、これまでの営業担当としての私の実績や顔の広さを逆手に取って、客先のクレーム処理やトラブル・シュートの対応などに社命として利用されるのが、私の我慢の許容範囲を超えてしまったのが直接の理由だった。
 私のサラリーマン生活の最終章が私が28年間も掛かって客先で一つ一つ積み上げてきた信頼を人の犯したミスの尻拭いで瓦解させるなんて、どうしても我慢ができなくなったと言い換えてもいい。
 会社を辞めてしまえば、もう誰からも束縛を受けない。それがやっと自分の意思で決められる。もし、それが「自由」と呼ばれるものであったなら、ぜひ手に入れてみたいと頑なに思い込んでしまった。
 そんな「自由」は、もとより本当の「自由」ではなかった。
 さまざまな美術展や絵画展、日帰りの名所巡り、国内旅行や海外旅行に出掛けてみても、自らが描いた自由の感覚が充たされず、これまで滅私奉公で身を粉にしてやってきた者には、突然与えられた自由はただただ長い時間が横たわっているだけで、結局は途方に暮れてしまう。
 やがて夕暮れまでの一日が本当に長くて、座っていても、歩いていても、立ち止まって景色に目をやっても、自分がどこから来て、今どこにいて何をしようとしているのか、果たして今の自分はどこに行こうとしているのか、ふと我に返り自分に問いかけても手ごたえはなく、かといってこのまま泡沫のように消え去っていくのがこの上なく恐ろしくて、右往左往するばかりであった。
 そして、自分の生活にメリハリを付けるために、私はいつしかアルバイト先で仕事をするようになり、仕事のないときは私は思い立つとすぐに小旅行に出掛けて行くようになった。ささやかな自由の発見だと言っていい。
 蒲郡、尾張一宮、名古屋の大須、大垣、岐阜など65年間で関わりのあった町に一日がかりで行ったりする。これもまた、私にとってある種の「自分探しの旅」なのである。画像
 今日の小旅行は「あおなみ線」乗車の旅である。行ってみようと思ったのは、4年前に名古屋にある外国語学校I.C.NAGOYAのグローバルビジネス科で一緒にビジネス英語を学んだKyokoさんが、授業最後の英語によるPresentationで<あおなみ線の沿線界隈>というテーマで発表したことを思い出したからだ。
 Kyokoさんの発表は実に熱のこもっていて、ぜひ一度乗ってみたいと思っていた。いわば4年越しで望みが今日かなったことになる。
 あおなみ線とは名古屋臨海高速鉄道の愛称で、英語表記は Aonami Lineである。
 始発駅はJR名古屋駅の新幹線ホーム寄りにあり、そこを出ると次は、ささしまライブ 、小本(こもと) 、荒子、南荒子、中島、名古屋競馬場前、荒子川公園、稲永(いなえい) 、野跡(のせき)と続き、終点は金城ふ頭である。約40分ほどの旅である。
 車窓から見える街並みは今までに見たこともない景色で、名古屋の街を別角度で見るようでとても新鮮であった。
 私は10年ほど前に、香港で九龍(カオルーン)駅から火炭(フォタン)駅まで香港の人たちの生活ぶりに接したくて電車に乗ったが、あのときの車窓から見える住宅地やマンションの風情が、あおなみ線から見える風景はよく似ていて、私は日本ではなく、どこか外国の景色を見ているような錯覚に陥っていた。
 確か、Kyokoさんは今サンフランシソコにいるはずだが、ときどきはこの<あおなみ線>からの車窓の景色を思い出しているのであろうか。
 今日は金城ふ頭駅付近を散歩しただけで帰ってきたが、次はラベンダーで有名な荒子川公園に行ってみようと思っていた。

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この記事へのコメント

2010年06月04日 07:50

私は60少し前の年齢です。
人生の先輩の今思われている事が、私にも真近にせまっています。
人それぞれ生き方は違いますが、非常に参考になります。
健康で働けるなら、いつまでも続けていたい、そんな思いです。
issa
2010年06月05日 00:09
誠さま、社会と関りを持って、健康なうちはいつまでも働きたい、もしその仕事が好きだったら、尚更ですよね。
 でも、サラリーマンであれば、いつかは職場から離れるときがきます。仕事の他にもう一つ、時間を忘れるほど熱中できることを今のうちに見つけ出すのも大切なことではないでしょうか。

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