ヒカレものの呟き

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zoom RSS 恨歌・怨歌・呪い歌

<<   作成日時 : 2008/06/24 22:07   >>

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 私は以前、自分が途轍もなく落ち込んだとき、山崎ハコの「織江の唄」をよく聞く習慣があると、このブログに書き込んだことがある。
 実は、それとは別にもう一つ、懲りずに何度も叶えられぬ恋をして、諦めらめなければならない状況に追い込まれたとき、私には人知れず聴く唄があった。
 それは、同じ、山崎ハコが歌った「きょうだい心中」という唄である。
 この唄は、もともと滋賀県に伝わる伝承歌だということだが、唄のテーマは、私が育った時代には、タブーとして口に出すことさえ憚れる「兄妹相姦」である。
 私がこの種の唄を好きだというと、自分がどこか精神的にバランスを欠いていると思わぬレッテルを貼られるのが嫌で、私は今まで人に話したことさえなかった。だが、この唄の怨念の凄さは、私には半端な言葉では表現できないほど強烈で、30年経った今でも、胸に迫りくるものがある。
 この唄の歌詞は作者不詳で、曲は山崎ハコが付けた。歌詞を一度、読んだだけでは、なかなか理解しにくいので、歌詞の補則として、唄の背景が分かる程度のブリーフを書くことにする。
 舞台は京都の西陣町、兄のモンテンは妹のオキヨに恋をし、「わしの病気は一夜でなおる 二つ枕に三つ布団 一夜頼むぞ妹のオキヨ」と情交を迫る。そこでオキヨは「私には惚れた男がおります。その男を殺したのなら女房になりましょう」と約束をし、妹はその男に変装し、兄に殺されるというという愛憎ストーリーである。これぞ、恨歌・怨歌・呪い歌で、彼女の歌い方と相まって、じっと聴いていると、いつしか、私は背筋に寒いものさえ感じ始めるのだ。
 この唄は、1978年発売の山崎ハコのLPアルバム「人間まがい」に収めれているが、私の記憶を頼りに書き綴ったので、細かい点で誤りがあるかも知れない。「きょうだい心中」の歌詞は次のようである。

   故郷(くに)は京都の西陣町で
   兄は二十一 その名はモンテン
   妹(いもと)十九で その名はオキヨ
   兄のモンテン 妹(いもと)に惚れて

   これさ 兄(あに)さま ご病気いかが
   医者を呼ぼうか 介抱しようか 
   そこでモンテン 申すには
   医者もいらなきゃ 介抱もいらぬ

   わしの病気は一夜でなおる 
   二つ枕に三つ布団 
   一夜寝たなら 病気がなおる
   一夜頼むぞ妹のオキヨ

   言われてオキヨは 仰天いたし
   何を言いやんす これ 兄(あに)様へ
   わしとあなたは きょうだいの仲
   人に知られりゃ 畜生と言われる

   実はあたしにゃ 男がござる
   歳は十九で 虚無僧なさる
   虚無僧 殺してくれたなら
   一夜 二夜(ふたや)でも 三三夜(さんさんや)でも
   末は女房となりまする

   兄のモンテン 虚無僧殺す
   深い編み笠 その下に
   哀れなるかや 妹(いもと)のオキヨ
   かねて覚悟の 妹(いもと)のオキヨ
   兄もモンテン 妹(いもと)を殺す

   思い込んだる 妹(いもと)のオキヨ
   妹(いもと)のオキヨに 騙された
   ここで死ねば きょうだい心中
   兄は京都の 西陣町で
   哀れなるかよ きょうだい心中

 この世では禁断の恋と後ろ指さされても、あの世で添い遂げようとして、妹のオキヨは、兄モンテンに自分を殺させたのであろうか。無論、第三者がオキヨの心情を正確に推し測ることはできない。
 いずれにしても、余りにおどろおどろした世界ゆえに、どんな言葉を駆使しても、決して、誰にでも納得させる理路整然とした説明ができる世界ではないことだけは確かである。
 私はよく戯れに、今一番大事な女友だちF.H.に、『もし、生まれ変わったら、オレと結婚してくれる?』と聞くと、彼女は、『また、子供みたいなことを言って。そんなよく分からない先の世界を考えるよりも、この世でこれから先、二人で楽しく生きていくことを考えましょうよ。』と結局は、随分年下の彼女に諭されてしまうことになる。
 もはや、私とF.H.はこの世で結ばれることはないに違いない。そうなら、そうで、私は構わない。
 ただ、私は、兄モンテンの【わしの病気は一夜でなおる 二つ枕に三つ布団 一夜頼むぞ妹のオキヨ】という切ない気持が、人間として抱いてはいけない畜生の心情とは、重々分かっていながら、唄を聴くたび、胸をきゅっと締め付けられる思いになってしまうのは、何故だろう。 

 【参考】;きょうだい心中
 1)『中上健次「枯木灘」バージョン』
   国は京都の西陣町で 兄は二十一その名はモンテン
   妹十九でその名はオキヨ 兄のモンテン妹に惚れて
 
   それがつもりて御病気となりて 三度の食事も二度となり
   二度の食事も一度となりて 一度の食事も咽喉越しかねる
 
   オキヨオキヨと二声三声 呼べばオキヨはハイハイと
   これさ母さん何用でござる 兄の見舞いじゃ見舞いにあがれ
 
   言われてオキヨは見舞いにあがる あいの唐紙さらりと開けて
   三足歩いて一足もどり 両手つかえて頭を下げて
 
   これさ兄さま御病気はいかが 医者を呼ぼうか介抱しよか
   そこでモンテン申すには 医者もいらなきゃ介抱もいらぬ
 
   わしの病気は一夜でなおる 二つ枕に三つぶとん
   一夜寝たなら御病気がなおる 一夜たのむぞ妹のオキヨ
 
   言われてオキヨは仰天いたし 何を言いやんすこれ兄さまよ
   わしとあなたは兄妹の仲 人に知られりゃ畜生と言わる
 
   親に聞かれりゃ殺そと言わる 友だちなんかに恥ずかしござる
   あなたに似合いし女房もござる わしに似合いの夫もござる

   としは十九で虚無僧なさる 虚無僧殺してくれたなら
   一夜二夜でもさん三夜でも 末は女房となりまする
 
   言うてオキヨはひとまず下がり 髪を結うたりお化粧したり
   親ゆずりの箪笥を開けて 下に着るのは白羽二重よ
 
   上に着るのは黒羽二重で 当世はやりの丸つけ帯を
   三重にまわしてはびこと結び ぽんと叩いて後にまわし
 
   当世はやりの糸かけわらじ 二尺あまりの尺八持ちて
   深い編笠面体かくし 瀬田の唐橋笛吹いて通る
 
   そこでモンテンの目にとまる あれは妹の夫であろう
   これを殺せばオキヨはままと 狙いこめたる六発玉を
 
   放てばキャーと啼く女の声で どこのどなたかお許しなされ
   言うてモンテンそばにと寄りて 編笠とりてよく見れば
 
   思いこんだる妹のオキヨ 妹のオキヨにだまされた
   ここで死ぬれば兄妹心中
   兄は京都の 西陣町で 哀れなるかよ きょうだい心中 

 2)『久世光彦「花迷宮」バージョン』
   浪華町なら大阪町よ 大阪町なら兄妹心中
   兄は十郎で妹はお菊 お菊十八兄さははたち
 
   兄の十郎が妹に惚れて いとし恋しの病の床に
   ある日お菊が見舞いに見えて これさ兄上病いはいかに
 
   わしの病はわけある病い 医者もいらねば薬もいらぬ
   せめてお前のお腹の上に 乗れば病いはぴたりと治る
 
   お菊兄さのためだとあらば 肌身合わすも死もいとやせぬ
   お菊痛かろ兄さはよかろ お菊泣くなら兄さも涙
 
   兄と妹じゃ夫婦になれぬ 世間悪いか二人の罪か
   雪の降り積む浪華の町に 紅が散る散る兄妹心中

 3)『山崎ハコ バージョン』 
 「きょうだい心中」は、1979年公開の映画「地獄」(神代辰巳監督)で山崎ハコによる、挿入歌として発表された。この映画の主題曲「心だけ愛して」と併せてシングル版『地獄「心だけ愛して」』として発売されている。「ベスト コレクション」のライナーノーツには、「作詞:不詳(「江州音頭」より)、作曲:山崎ハコ」とある。

  国は京都の 西陣町で 兄は二十一 その名はモンテン
  妹十九で その名はオキヨ 兄のモンテン 妹に惚れて
 
  これさ兄さま 御病気はいかが 医者を呼ぼうか 介抱しようか
  そこでモンテン 申すには 医者も要らなきゃ 介抱もいらぬ
 
  わしの病気は 一夜でなおる 二つ枕に 三つぶとん
  一夜寝たなら 病気がなおる 一夜頼むぞ 妹のオキヨ
 
  言われてオキヨは 仰天いたし 何を言いやんす これ兄さまへ
  わしとあなたは 兄妹の仲 人に知られりゃ 畜生と言われる
 
  実は私にゃ 男がござる 年は十九で 虚無僧なさる
  虚無僧殺して くれたなら 一夜二夜でも さん三夜でも
  末は女房と なりまする
 
  兄のモンテン 虚無僧殺す 深い編笠 その下に
  哀れなるかや 妹のオキヨ かねて覚悟の 妹のオキヨ
  兄のモンテン 妹を殺す
 
  思いこんだる 妹のオキヨ 妹のオキヨに だまされた
  ここで死ねば きょうだい心中
  兄は京都の 西陣町で 哀れなるかよ きょうだい心中

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苦しまない、いい呼吸をしながら、モンテンさんがオキヨさんと夫婦になれれば、生きることができる、それほどの苦しむ「兄で男」の気持ちを感じました。山崎ハコさんに、こんな歌があったとは。。
正(せい)の他人同士の男女であっても、なかなか、愛と、好きの蓄積や延長のうえに夫婦とは、組み合わせにはならない、そんな寂しさをisasaさんがお感じになってるからでしょう〜と思います。若輩からの感想ですが。。私がそう思ってるところのコメントでもあります。
さとし君
2008/06/25 11:29
さとし君様、正におっしゃる通りです。
私とF.H.との出会いの時間的空間が、10年ずれていれば、私の思いは叶っていたのかも知れないと思うときがあります。
そんな独り言のような愚痴を、偶然、聞いていた彼女は私に、「そのときは、たぶん、あなたとは付き合ってはいないと思うよ。」と言います。
彼女はいつも冷静で、現実的です。
コメントありがとうございます。
issa
2008/06/25 23:35
はじめまして 突然にお尋ねいたし誠に恐縮です
わたしは You Tubeの音楽動画を少々楽しんでいるものです

山崎ハコさんの きょうだい心中を聴き 興味を持ちました
まさに情念の唄 道徳をこした情念の唄 名作と思います

一般的には 受け入れにくい事柄・・・ですが貴方様のブロク
を偶然にも発見 ぜひぜひ このページを紹介させて頂きたく
お願い致したく 勝手を申しますが宜しくお願いいたします
また後日お伺いいたしますので・・・

 

kokoyo31
2011/04/02 22:09
kokoyo31さま、わざわざ連絡をいただいて、むしろこちらが恐縮しております。どうぞ、ご意向に沿うようにしてください。
issa
2011/04/02 22:45
早速 お返事いただきをありがとうございま 
このページを紹介させていただきます。
結果はURLにてお知らせいたします。
kokoyo31
2011/04/03 12:44
30年ぶりに、この歌が聞きたくなり、歌詞だけ思い出せないので検索していたら、自分と全く同じパターン(織江のうた→きょうだい心中)の人がいるんだと思い、ホッとしたような・・・ものすごく微妙ですが確かに誰かに話したことはなかったですね。まあ時々思いにふけるのもいいですよね。未来に向けて頑張りましょう。
りぼん
2011/04/05 19:36
りぼん様、おっしゃる通りですね。ときどき昔の音楽を聴いて思いに耽るのは、ジャンプの準備のために一旦筋肉を弛緩させるようなものだと私は思っています。人間、緊張ばかりだと長くは持ちませんよね。
コメントありがとうございます。
issa
2011/04/05 23:25
最近ライブで時々歌ってますよ。曲調をすっかり変え明るくある種コミカルに唄っています(個人の感想です)。興味あればライブ聴いてください、最近増えています。
私ですか、自称(非公認)宣伝部長です。
はるかの父
2015/04/06 08:13

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