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長野県阿南町新野の盆踊り
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作成日時 : 2007/08/24 22:48
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今日の朝、テレビで長野県阿南町新野の盆踊りを紹介をしていた。私は懐かしく、見入ってしまった。私の養父は長野県の出身で、小学生の頃、数度、新野の盆踊りを見たことがあったからだ。
養父は6人兄弟で、一番上の姉が長野県下伊那郡阿南町、二番目の姉が下伊那郡天龍村平岡、養父のすぐ上の兄が下伊那郡南信濃村和田に住んでいて、私は小学生から中学生に掛けて、夏休みには毎年、養父母のどちらかに連れられ、三週間ほど、この地方の親戚の家を泊まり歩いていた。
養父の実家に行くには、私が住んでいる愛知県大府市から、上りのJR東海道線に乗り、豊橋で飯田線に乗り換え、天竜川沿いに三時間半ほど掛けて、列車は数多くの駅に停車しながら、やっと平岡駅に到着する。次に平岡駅で一時間一本のバスに乗り換え、曲がりくねった険しい道を40分ほど揺られたあと、養父の実家である南信濃村和田に辿りつく。子供の私にとっては、一日がかりの長い旅であった。
そこで私は夏休みの大半を過ごす。夏休みも終わりに近づくと平岡まで帰り、2日ほど、そこに泊まり、今度は阿南町の養父の一番上の姉の家に行き、やはり2日ほど泊まるのである。そのときに、私は新野の盆踊りを見に行っていた。
阿南町の家では、お盆入りの日に、精霊のために、迎え火を焚き、仏壇脇にあった切子灯籠に火を入れて、家族全員協力して玄関に吊るしていたのを、おぼろげながら憶えている。
成人した従兄弟やその友達たちが、酒を飲み、下駄の音をせわしく立てながら、浴衣姿で走り回っていた。普段、夜九時を過ぎると灯りも消え、人っ子一人いなくなる町の通りが、盆踊りの期間だけは人通りが絶えない。幼かった私も、回りの熱気で少し興奮気味になり、従兄弟たちのお古の浴衣を着せられ、少し大きめの扇子を持たされて、笛も太鼓もなく、櫓の上から聞こえる音頭に合わせて、従兄弟たちに薦められるまま、踊りの輪に加わっていた。50年以上も前の盆踊りの光景が、日本の懐かしい影絵のように、今も私の心の中に陰を落としている。
だが、テレビで紹介される今日まで、恥ずかしいことであるが、新野の盆踊りの意味をまるで知らなかった。
テレビによれば、天竜川流域の「三遠南信地方」は、『芸能の宝庫』といわれるほど古い民俗芸能が数多く分布する地域で、その中でも阿南町新野は、冬の雪祭り・夏の盆踊りなど多彩な芸能を伝える、民家500軒程の山間の小さな町だと紹介している。
お盆の三日間徹夜で踊られる盆踊りは、囃子を使わず音頭(肉声)だけで踊る古風なもので、歌詞も古いものを残していて、その数は700を超えると言う。
新野盆踊りの圧巻は、16日明け方の「踊り神送り」で、最後まで踊り続けようとする若者たち(精霊たちに対する、この世に残された者たちの執着心を表現していると言われている)と、それを押しのけて進む【切子灯籠=新精霊】が、激しくも感動的なせめぎ合いを演じる。せめぎ合いが一時間以上も続き、終には、若者たちも徐々に人の輪を解き、【切子灯籠=新精霊】たちに道を譲る。幾つもの切子灯籠が村の小高い広場一ヶ所に、無造作に積み上げられ、送り火が点けられる。すると切子灯籠を置いたあと、誰一人として、切子灯籠の燃え盛る方向を振り向こうともせず、無言で家路につく。振り返ると、精霊がこの世に執着を持って、成仏できないという言い伝えを誰もが信じているからだ。
今なお「踊り」と「送り行事」が一体として行われる新野盆踊りは、私たちの祖先の時代の民俗の姿を伝えるたいへん貴重な文化財であると、テレビの語りは誇張することもなく、静かに結んでいる。
私の小学生の頃、天竜川流域地方は火葬をせず、土葬であった。そうしたことがより一層、新野盆踊りが、村人の心の中に、精霊たちとの絆を断ち切る幽玄で厳かな「送り行事」として、今尚、生き続けている一つの理由なのかも知れない。
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